今年1月、北朝鮮の観光を終えて帰国しようとした平壌の空港で、いきなり身柄を拘束されていたアメリカの男子大学生。「政府の転覆を狙う破壊活動をしている」との嫌疑がかけられ、このほど裁判が開かれた。彼はこの先15年にわたり、北朝鮮で重労働に従事することになるという。
新年を北朝鮮で迎える観光ツアー客として北朝鮮入りするも、“怪しい行動があった”として帰国間際の空港で警察に身柄を拘束されたオットー・ウォームビアさん(21)。米オハイオ州ワイオミング出身でバージニア大学の学生である。容疑は、オットーさんが宿泊していた平壌のホテルにて関係者以外立ち入り禁止のエリアに侵入し、政府のスローガンが記された広告バナーを盗んだというもの。破壊活動をする工作員との嫌疑がかけられた。
このたびその裁判が最高裁判所で開かれたが、英メディア『metro.co.uk』が伝えているところによれば、オットーさんには有罪判決が下り、15年間にもおよぶ労働教化刑が言い渡されたもよう。朝鮮中央通信社(KCNA)は、オットーさんが涙ながらに「北朝鮮に対する敵意があったことを認めます。盗んだ広告バナーは戦利品として知り合いの女性の教会に飾らせるつもりでした」と話すなど罪を認めた様子を報じているが、自白を強要した可能性も十分にある。
この裁判の前には、米国のベテラン外交官であるビル・リチャードソン氏と北朝鮮の国連担当の外交官2名が会談しており、リチャードソン氏はオットーさんの身柄を釈放するよう強く働きかけたが効果はなかったという。アメリカの政府高官との接触を図る目的か、北朝鮮が米国の一般人の身柄を拘束することは以前からたびたび発生している。
北朝鮮では2013年、羅先(ラソン)を観光していた韓国系カナダ人の牧師がやはり破壊活動を行う工作員だとして逮捕され、15年の労働教化刑を言い渡されていたが、きつい農作業に体調を崩しているとの手紙を家族に宛てたところむしろ刑期が無期に延びてしまった。現在ほかにも2名のアメリカ人が身柄を拘束されており、それぞれに裁きを待っている状況だという。
1月6日に4回目の核実験を行い、2月7日には長距離弾道ミサイルの発射実験も強行。また国連安全保障理事会が北朝鮮制裁決議を全会一致で採択し、韓米合同軍事演習は非常に大規模なものとなっていることに強く反発する北朝鮮。ここ数日は、金正恩第1書記が核弾頭の爆発実験、および弾道ミサイルの発射を近い時期に行う準備に入るよう指示したことが大きく伝えられている。こうした極度の緊張状態の中で下された非情な判決。米国政府の出方にも注目が集まっている。
出典:http://metro.co.uk
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)