“ベタな表現”だとして嫌われることが多い「全米が涙」という言葉。しかしアメリカのニュースにおいては1年に1~2つ、敢えてこの言葉を使わせていただきたいと思う記事に遭遇するものである。ウィスコンシン州から飛び出した感動のニュースをご紹介したい。
全米のPTAは今、ウィスコンシン州の小学校の女性教師による勇気あふれる大きな決断の話題で持ち切りである。それは腎不全の唯一の根治的治療である腎臓の移植。たった8歳にして命を脅かす深刻な病に苦しんでいる教え子のため、教師は片方の腎臓を贈ると決めたのであった。
感動のストーリーが全米に向けて飛び出したのは、ウィスコンシン州ミルウォーキーの北に位置する「オークフィールド小学校」。腎不全を患っている1年生のナターシャ・フラーちゃんを受け持ったジョディー・シュミット先生は、密かに自身の腎臓について検査を受けていた。腎機能、血液型、リンパ球の反応をみるHLA抗原などの検査を経て、ナターシャちゃんのドナーとして適合することを知らされたという。
ナターシャちゃんの祖母クリスさんを学校の教室に招き、ギフト用にラッピングを施したピンク色の箱を卓上に置いたジョディー先生。「これはお嬢さんへのプレゼントです」と告げると、祖母は興味津々に開封する。そして箱の底から出て来たのは「私の腎臓を贈ります」というメッセージであった。
「オーマイガッ!」と絶叫すると、感動のあまり泣き崩れてしまったクリスさん。涙と笑顔でクシャクシャになりながら、「“ナターシャのお転婆が過ぎる”という呼び出しだとばかり思っていました」と話している。その傍らで、あまりにも幼いために両者の腎臓が適合すると判明した、移植手術が可能になったといった言葉をまるで理解できないナターシャちゃんは、「病院でアイスを買ってもらえる?」などと尋ねては無邪気に笑うのであった。
ナターシャちゃんが命の恩人という言葉を真に理解できるようになるのは当分先であろうが、ジョディー先生はとても晴れやかで満足そうな表情を浮かべている。彼女は腎臓の摘出手術を受けるにあたり、親きょうだい、そして夫とよく話しあっていた。家族はもちろんその後の体調の変化を心配したが、「人の役に立つようなことをしたい」という彼女の思いはあまりにも強かったという。
出典:http://abcnews.go.com
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)