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writer : tinsight-yokote2

【海外発!Breaking News】腫瘍が11日間で消滅も 画期的乳がん治療発見か「抗HER2薬」(英)

女性がかかるがんの中で最も患者数が多いといわれる「乳がん」。日本では約12人に1人がこれを経験するともいわれ、患者数は増えるばかりである。そんな中で特に注目されるのが、若い年齢で発症する乳がんに多い「HER2陽性」というタイプ。近年、その腫瘍を縮小させる効果を持つ新薬の開発が進んでいるが、また新たな光が見えてきたようだ。

HER2陽性タイプは全乳がん患者の15~30%にあたり、若年性で発症することも多い。患者の体内ではHER2タンパクが過剰に発現しており、それが乳がん腫瘍に栄養を供給していることがわかっている。このタイプの乳がんは悪性度が高く予後は不良とされてきたが、近年では治療薬が登場し、ステージ2-Aの患者で10年後の生存率は80%前後と高い治療効果が確認されている。

そんな中、毎年5万人を超える女性が新しく乳がんの診断を受けるというイギリスで「ラパチニブ(lapatinib)」と「ハーセプチン(Herceptin)」を同時併用した場合の抗HER2薬の効果について「腫瘍をたった11日間で消滅させてしまいました。そのような患者では化学療法すら不要かもしれません」という驚きの発表があった。治験は国民保健サービス(NHS)が管轄するマンチェスターの病院で行われ、257名の女性乳がん患者が参加。腫瘍の大きさは1~3cmで、診断から手術までの待機期間に「薬が何らかの効果を示すようであれば」との期待を込めて参加したといい、2週間の観察期間において参加者の11%に腫瘍の完全なる死滅が確認されたほか、17%で腫瘍が5mm以下に縮小されたという。

研究者のひとり、ロンドン大学―ザ・インスティテュート・オブ・キャンサー・リサーチ(Institute of Cancer Research in London)のジュディス・ブリス教授は、英『BBC』の取材に「短期間でここまでドラマチックな効果を得られるとは実に驚き、予想外でした。辛い化学療法を受ける必要のない患者すらいることがわかったのですから。ただしHER2は再発や転移のリスクが高く、それを防ぐに至るまでには膨大な研究が必要となります」と語っている。

ラパチニブが腫瘍細胞の内部に入り込んでHER2の働きを阻止するとすれば、ハーセプチンは細胞の表面をがっちりと抑えこむとのこと。乳がんといっても発症の年齢、アンジェリーナ・ジョリーに乳房摘出手術を決断させたことで知られるBRACA遺伝子における変異、ホルモン感受性、HER2、EGFR、HER3、HER4など過剰タンパクの発現など原因別に10種類ほどに細分化されおり、多数存在する薬剤を組み合わせて投与する方法についての研究が急務となっている。

英米の多数のメディアが今、『European Breast Cancer Conference(ヨーロッパ乳がん会議)』で発表されたその論文を各国の医師、研究者らが積極的に紐解き、やがて臨床の現場で活かされるよう強く期待したいと報じている。日本の医師、研究者、薬剤メーカーらもこのたびの発表には大きな注目を払っているに違いない。

出典:http://www.bbc.com
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)