洋画や海外ドラマにおいて、アメリカの高校や大学での中国人学生は“頭脳明晰。苦学生も多く奨学金を受け取っているため非常に勤勉で成績優秀。人気者とはいわないが信頼されている”といった印象で描かれている。だがカリフォルニア州のある高校で、中国からの留学生が身の毛もよだつようなイジメ事件を起こしていたようだ。
ロサンゼルス東部サンガブリエル・バレーの、メキシコ系米国人の家庭などにホームステイしながら『Oxford School』という私立の学校に通っていた中国人留学生たち。行動も常に一緒、結束も固かったはずの彼らの間で勃発した壮絶なイジメが人々の大きな関心を集めている。
『ロサンゼルス・タイムズ』が伝えたところによれば、誘拐及び傷害罪につき起訴されていたのは“John”ことXinlei Zhang、“Coco”ことYuhan Yang、そして“Helen”ことYunyao Zhaiという3名の被告。高校3年生であった2015年3月30日、同級生の“Camellia”ことYiran Liuさんを「ローランドハイツ・パーク」におびき出して負傷させたもので、Liuさんは裸にさせられると殴る蹴るの暴行を受け、切られた頭髪を食べるよう強要され、胸や手にタバコの火を押し付けられるなどした。あるレストランでの飲食代金支払いがトラブルの原因であったという。
このほどその裁判が結審し、ロサンゼルス郡高等裁判所は主犯格のZhaiとYangに対してはそれぞれ懲役13年および10年、そして単なるサポート役だったとして無罪を主張していたZhangにも懲役6年の実刑判決を言い渡したもよう。ほかにも数名の留学生がこの暴行事件に関与したというが、1名が昨年12月に逮捕されたほかはすでに卒業で帰国しているという。
未成年で精神的に未熟なわが子を単身ポンとアメリカに送りこみ、学費として年間13,000ドル支払うほか毎月約1500ドルを送金し、当然ながら最新式のiPhoneを買い与えていた彼らの中国の家庭。その様子についてトーマス・C・フォールズ判事は、予備審問の際に「私はこの事件に、1954年に出版された英作家ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王(原題:Lord of the Flies)』という著書を思い出します」と述べていた。
これは南太平洋の無人島に置き去りにされた少年らの物語で、各人の身勝手さが露呈すると仲たがいが始まり、力関係に上下が生まれるも味方が敵に回り、威張っていた者は最終的には孤立して命を奪われるようになる。ジュール・ヴェルヌの『十五少年漂流記』やロバート・バランタインの『珊瑚礁の島』などを派生させた作品で、精神的に未熟な者だけで形成される集団の脆さを痛感させられるストーリーだ。またYangを担当したレイフォード・ファウンテン弁護士の「彼らはいつも中国人留学生同士の小さな集団で固まっていました。それは信頼できる大人もいない、どうしてよいかわからない状況と孤独ゆえの結果だと断言できます」という言葉も法廷の人々に強い印象を残したという。
十分な資産があるためわが子には英語圏で高い教育を、そう望む中国の家庭が実に多い近年。当時15歳のXinleiを気候や環境も素晴らしいカリフォルニアに送り出したZhang家も例外ではなかった。しかしイジメの加害者として逮捕後1年近く拘置所に身柄を拘束され、この先何年も刑務所にて服役することが決まった息子を前に、両親は「私たちの選択は間違い。息子はまだ私たちの傍においておくべきでした。今、中国では子供のアメリカ留学が流行していますが、どの家庭ももっと慎重に考えた方がよいです」と中国のメディアに話すなど、ひどく落胆している様子だ。
出典:http://www.latimes.com
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)