毒性や副作用が取り沙汰されるも、大腸菌、グラム陰性菌に最も強く作用する抗生物質「コリスチン」は、ほかの薬が効果を表さないで重症化する感染症において“最後の頼みの綱”になるとみられてきた。しかし…。
現在の医学界では最強の抗生物質といわれてきた「コリスチン」。しかし中国の養豚場で昨年11月、イギリスで12月にその耐性菌(スーパーバグ)が存在することが医学誌『ランセット感染症ジャーナル(Lancet Infectious Diseases)』などで発表され、その拡散がただ心配されていた。だがそれは早くも現実のものとなってしまったようだ。
このほど米ニューヨークに本部を置く「自然資源防衛協議会(Natural Resources Defense Council)」が、その耐性菌は東南アジア、ヨーロッパ、カナダ、日本など19か国にすでに広まっていると発表し、強い伝染力は疑いようもないとした。フランスやイギリスのように家畜、食肉、人間いずれにもおいても感染が確認された国もあれば、日本は家畜からのみ、またイタリアは食肉からのみ検出されている。
なぜこのような事態に陥ったか、それは中国の家畜業界が感染症予防や成長促進のためにコリスチンを恒常的に使用してきたことにあると専門家たちは批判する。米・疾病予防管理センター(CDC)はスーパーバグについて、「カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)やメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の感染例は国内で年間200万人ほど、うち2万3000人が死亡」としているが、コリスチン耐性菌がもしも米国内に蔓延した場合、感染者の半数が死亡するのではないかと指摘する専門家もあるようだ。
何より、このたびの耐性菌に確認されている遺伝子MCR-1が他の細菌に取り込まれてさらに強いものへと変化していけば、医療現場は終わりのない負け戦を延々と強いられることになる。発症もしていないのに感染症予防のためとして安易に使用されている抗生物質。世界の隅々の国まで徹底してそうした体質を改めることが急務だという。
出典:http://www.todayonline.com
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)