インド西部のマハーラーシュトラは大都市ムンバイを擁する州である。だがそこには「ムンバイの一般市民よりはるかに豊かな資産を蓄えている」と豪語する人々が暮らす村があった。“奇跡の村”としてその話題は世界に広まっている。
その村はマハーラーシュトラ州のHiware Bazar。ムンバイから150km以上東に離れたアフマドナガルにあり、1972年から1990年代中頃までひどい干ばつに苦しめられた農村である。だが今は違う。ムンバイはご存知の通りインドの経済の中心地であるが、裕福率でいえば圧倒的にHiware Bazar村の人々の方が上。なぜなら村民の25%がミリオネアだそうだ。建て直しにひたすら尽力した村の長老、現在82歳のRaosaheb Rauji Panwarさんはメディアの取材にこう語っている。
「ひどい干ばつで作物が育たず、食うにも困るようになると誰もがフラストレーションから穏やかな心を失いました。周囲に対してイライラと神経をとがらせ、落ち着かなくなり、ささいなことから衝突ばかり起きたのです。アルコールに走る者も増え、それはさらに村を荒廃させました。」
「当時、私は村でたったひとり大学を卒業した人間でした。都市部でデスクワークの仕事に就くつもりでしたが、皆から頼られて村に残り、村長にも選ばれました。最初に取り組んだのは反発を承知の上で22軒あった酒屋を閉店させること。続いては銀行に貸付を依頼し、貧しい者を救い、インフラ整備です。雨水の保存、濾過システム、給水システムなどを確保し、ダムおよび各種堤防の建設を進めました。」
「水不足の問題が解消され、農業用水の管理がうまく行くようになると、ムンバイに出てしまった人々も再びこの村に戻ってきました。不毛であった大地は改良により肥沃に変わり、農作物の種類は100にも及ぶようになりました。数年前からキビ、タマネギ、ジャガイモの生産量は大変なものになっています。」
そして現在のHiware Bazar村の人口は1250人余り。インドの全市町村において最も高い農業生産額を誇っており、世帯平均月収は1995年には日本円で約1450円であったものが現在は約5万2000円にも上昇。235世帯のうちなんと60世帯が百万長者として認められている。どの家も丈夫で長持ちするコンクリートで建てられており、トイレも完備。道路はしっかりと舗装され、路肩に植え込んである花たちが彼らの豊かさ、心の余裕を物語っている。
「お手本にしたい奇跡の村」として今、インドの全市町村が羨望のまなざしを向けているHiware Bazar村。長く続いた苦しみの時期を耐え抜いた賢者の知恵と、9割がよその村への転出を選んだ中でその指導に従った者たちの努力の賜物というほかない。興味深いことに村では現在もタバコとお酒の販売は全面禁止だが、特に不満は出ていないそうだ。
出典:http://hiware-bazar.epanchayat.in
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)