数百万年を費やし地球内部の高温高圧な環境で生成される天然ダイヤモンド。1キロ取り出すために5300トンの自然原料が粉砕処理されるなど、その希少さ、美しさは誰もが認めるところであろう。しかし天然ダイヤモンド採掘に関しては長年様々な議論がなされてきた。
日本で2007年に公開された、レオナルド・ディカプリオ主演の映画『ブラッド・ダイヤモンド(原題:Blood Diamond)』は、ダイヤモンド採掘場での強制労働や、武器や紛争の資金調達のためにダイヤモンドが取引されるといった“紛争ダイヤモンド”の問題を浮き彫りにした。人道上の問題に加え、ダイヤモンド採掘に伴う環境破壊が取り沙汰される中、いま注目を集めているのが人工ダイヤモンドだ。英メディア『dailymail.co.uk』が伝えている。
米ワシントンD.C.に拠点を置く「ワシントン・ダイヤモンド・コーポレーション(WDC)」は人工ダイヤモンドの研究開発、販売にかけては50年以上の歴史を持つ。数ある合成方法の中で、WDCが得意とするのは化学気相蒸着法(Chemical Vapor Deposition, CVD)である。小さなダイヤモンドシードと呼ばれる基板はダイヤモンド成長に最適とされる800度に設定され、メタンや水素を含んだチャンバーに入れられる。その基板にダイヤモンド膜を何層にも堆積させ、宝石としてカットできる大きさになるまで成長させる。
WDCによると、ダイヤモンド合成技術はここ数年で急速に進化を遂げ、生産コストは天然ダイヤモンドの約半分にまで抑えることが可能となっている。また、ダイヤモンドの天然形成には数百万年かかるが人工形成は2週間。その効率は群を抜いているにもかかわらず、品質や化学的成分は天然のものに引けを取らない。
人工ダイヤモンドが天然ダイヤモンドを扱う業界に与える影響を危惧する声もあがっているが、英「デラックス・ダイヤモンド」のオーナーであるジョアンナ・オーブライアンさんは「安価でよりエコ・フレンドリーであることを売りにしている人工ダイヤモンドですが、業界のシェアは1~2%に過ぎません。天然物があと5~10年後には枯渇すると言われる中、天然ダイヤモンドの価格は上昇することが予想されます」と語っている。
では、人工ダイヤモンドの将来性はどうだろうか。WDCの広報担当者は「男性だけが来店される場合、人工物の婚約指輪を選ぶことはめったにありません。でもカップルで来店されると、男性はそのお値段に、女性はダイヤの大きさに感動され、人工ダイヤモンドの素晴らしさに気づくのです」とアピール。先月には俳優レオナルド・ディカプリオをはじめとした大物投資家らが、米カリフォルニア州サンタクララの人工ダイヤモンド開発会社「Diamond Foundry」の設立に際し、巨額の投資をしたとして話題となった。1955年に人類が初めて人工ダイヤモンド形成に成功してから60年以上を経た現在の市場規模は100億ポンド(約1兆7900億円)といわれ、2023年までには190億ポンド(約3兆4000億円)になるだろうと予測されている。人工ダイヤモンドが今後、ますます注目を集めるのは間違いない。
※ 画像はdailymail.co.ukのスクリーンショット。
(TechinsightJapan編集部 A.C.)