こちらで16日にお伝えしていた、台湾発ロサンゼルス行き中華航空機における機内出産の話題。客室乗務員らの懸命な介助の姿に拍手が贈られ、親子は無事アメリカの病院に搬送されたが、入国管理局職員は大変厳しい態度で母親に「強制送還」を言い渡していたもようだ。
今月8日、台湾桃園国際空港を飛び立ち、米ロサンゼルス国際空港に向けて太平洋上を飛行中であった中華航空(チャイナエアライン)の旅客機内で、台湾国籍の女性が女の子を出産した。偶然搭乗していたUCLA大学病院の医師の立ち合いのもと、客室乗務員らの必死な介助のおかげで機内での出産をなんとか乗り切ったその産婦。飛行機はアンカレッジの空港に緊急着陸し、親子はただちに現地の病院に搬送されたが、母親だけはあっという間に台湾に強制送還されてしまったようだ。
なぜなら、台湾のどのエアラインにおいても医師が発行した旅行許可証明書を持たない妊娠32週以降の女性の搭乗は受けつけないという決まりがある中、彼女はなんと妊娠36週目であることを隠してチケットを購入し、空港チェックインにおいてもそれを偽っていたことが発覚したのである。また機内では、激しい陣痛にうなり苦しむ彼女に客室乗務員が「横になって。分娩の準備に入ります」と告げると、「産むのはまだ先でいいの。今どこを飛んでいるの? 米国の領土の上なの?」としきりに訊ねていたという。
もしもこの赤ちゃんに米国籍が認められた場合、両親もほぼ間違いなく永住権を取ろうと移民審査に臨むであろう。だが近年、出産により子供に米国籍を取らせてから自分たちも米国移住をと考えている外国人に、移民局は非常に厳しい態度をとるようになっている。強制送還となったその女性は、台湾の人々に「娘は正式に米国市民権を得た」などと話しているというが、“国土あるいは国土より19.3km以内で誕生”という条件を満たしていないこともあり、そんな簡単なわけがないというのが台湾当局の見解である。
また米国で出産といっても、旅行用の保険に加入したところで大変高い医療費に泣く例は多い。2013年にはカナダの妊娠6か月の女性がハワイ・マウイ島に旅行した際、途中で破水してホノルルの大病院に空輸搬送された。早産のため超低体重で誕生した赤ちゃんはNICU(新生児集中治療室)で2か月間ケアを受け、ヘリ輸送から退院に至るまでかかった費用、なんと95万ドル(日本円にして約1億1400万円)を請求されている。しかしその女性は妊娠中に膀胱の感染症で治療を受けたことがあり、保険会社が「リスクがある身で海外旅行に出かけた」と支払いを拒否して大きな話題となってしまった。
※ 画像はabcnews.go.comのスクリーンショット。
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)