エルサルバドル共和国のある病院で、人身売買組織も絡んでいる可能性がある「赤ちゃん取り違え」事件が発生した。どちらにも似ていない肌色の赤ちゃんを渡された両親がDNA鑑定を依頼して発覚したという。
エルサルバドル共和国の首都サンサルバドルから、信じ難い「赤ちゃん取り違え」の事件が伝えられて波紋を広げている。自分たちの肌の色からは想定できない褐色の肌の赤ちゃんを「あなた方のベビーです」と手渡されたという夫妻。不信感を募らせてDNA検査を行い、取り違えの事実が判明した。彼らは今、本当のわが子が人身売買組織の手に渡ったかもしれないという不安で眠れない夜を過ごしている。
「赤ちゃん取り違え」の犠牲となったのは、英国籍で米国に暮らすリチャード・カシュワースさんと妻のメルセデス・カサネラスさん。リチャードさんがエルサルバドルで宣教師をしている時に出会って結婚したといい、彼女が里帰り出産を希望したためサンサルバドルでもきわめて評判のよい「Ginecologio病院」で男の子を出産した。だがメルセデスさんには赤ちゃんが自分の子ではないという母親としての確信があり、米テキサス州の自宅に戻って赤ちゃんが3か月になった頃に夫妻はDNA検査を依頼したのであった。
メルセデスさんは妊娠5か月のころから、産婦人科のAlejandra Guidos医師が「パパがたとえ白人でも、赤ちゃんが褐色の肌になることはよくあるのですよ」と健診のたびに繰り返し言うことに違和感を覚えたと警察に話し、同医師が逮捕された。またその病院で誕生した赤ちゃんについてのデータが開示されたものの、同日に産まれた子はみな本当の両親のもとに届けられており、夫婦は自分たちの子だけが盗まれてしまったという事実に強いショックを受けている。
夫妻は地元テレビ局とのインタビューで「悲しみと心配から眠ることもできない。無事戻ってくることをひたすら待っています。どうかわが子を返して下さい」と涙で訴えた。この国で乳幼児が誘拐されると、真っ先に心配されるのは人身売買組織の手に渡ってしまうこと。夫妻は「できるだけそのことは考えないよう努力しています」と力なく語った。そして彼らは褐色の肌の赤ちゃんの今後についても深く心配している。「この子の母親も探してあげたいです。でもそれが叶わないのなら、私たちは喜んでこの子の親になりたい。この子を心から愛していますから」と優しい笑顔を見せた。
なお、産後の枕元に麻酔専門医が来て“神経が過敏になっているようだ。眠れるように処置しましょう”と言って何かを投与され、大変長い時間眠りに落ちていたことを思い出すというメルセデスさん。またある時、看護師に「この子の陰茎の色は出産したばかりの時に見た色と明らかに異なっている。おかしい」と問い詰めたところ、看護師から「それは普通のこと。何も問題はない」と一蹴されたという。こうしたことから、この赤ちゃん取り違えが過失ではなく病院ぐるみで故意に行われていた可能性もあり、さらに詳しい取り調べが必要であるようだ。
※ 画像はtelegraph.co.ukのスクリーンショット。
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)