米ジョージア州アトランタ市の公立スクールで発覚していた、州統一学力テストにおける長年の不正な水増し採点事件。校長・教頭を含む教育者らが起訴されるという全米注目の裁判が、ついに最高裁で結審を迎えたもようだ。
白人支配社会において、黒人やヒスパニック系の人々の地位の向上には何よりも幼いうちからの教育、成績の向上が大切ということで、2002年に米国で始まった「落ちこぼれ防止法(No Child Left Behind Act)」。全米各州で統一学力テストが実施され、一定の基準を満たさない公立のスクールには教師の解雇、助成金カットなどの厳しい措置が待っている。だが、かねてから統一学力テストの点数の芳しくなかったジョージョア州アトランタ市で、教育者は徐々に誤ったやり方を模索するようになっていった。誤った回答には消しゴムを使って正しく書き直し、丸をつけて不正な水増し採点を行っていたのである。
こうして2013年には校長・教頭・教師計35名が起訴されていたが、有罪判決に不服だとしてこのほど最高裁に上訴していたのは12名(すべて懲戒免職。その後1名が乳がんにより死亡)であった。法廷にずらりと並んだ上告人はすべて黒人。彼らは白人優位の社会においても学業を愛し、やがて教育者という誇らしい職に就いた黒人における成功者たちであったが、検察側は「教育界にあってはならない腐敗行為だ」として20年を超す禁固刑を求刑していた。
約半年にわたり注目を集めてきたこの裁判、ついに高等裁判所のジェリー・バクスター裁判長が14日、「この事件で最も傷ついたのは正しく学力を判定されなかった何千人という子供たちです」という主文を添え、8名に対して1年~7年の懲役刑を言い渡した。刑務所生活に入る者がいる一方で、保護観察付き執行猶予処分となり2000時間の社会奉仕活動を義務付けられた者もいる。
ほかには半年間にわたり週末のみ刑務所で過ごすことになった者、また5年にわたり夜間の外出禁止を言い渡された者もおり、また罪を認めて司法取引に応じることにより軽い処分となった者も多かったこの裁判だが、このたびの上告人は「子供の学力については犯罪が多発するアトランタ市の土地柄や住民らの暮らし向き、親の学歴や教育に関する意識などが強く影響する」として、自分たちの起訴を不当だと猛反発を続けていた。貧困家庭で育った黒人の子供たちの大学(高校)進学率の低さ、犯罪に手を染める子供たちの多さに、教師の努力だけではどうにもならないと主張。また市民からもアトランタ市全体が抱える社会的問題が教師らを精神的に追い詰めているとの声も多々上がっていた。残る1名についての判決は8月になるという。
※ 画像はajc.comのスクリーンショット。
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)