日本では起こり得ない話かもしれないが、アメリカはここまでチャイルドネグレクトに対して厳しいという、ひとつの逮捕例をお伝えしたい。米サウスカロライナ州で1か月前、あるシングルマザーがその容疑で逮捕され、有罪となれば10年の服役を言い渡される可能性が出ている。いったい彼女はわが子に対して、何をしてしまったのであろうか。
フルタイムで働くシングルマザーにとって、何より気がかりなのは幼稚園や学校が終わった後の子供の居場所と安全。その土地柄や犯罪発生率にも左右されるが、たとえ治安の良さが評判でも“絶対に安全”と言えるような町などどこにもない。そのような中、米サウスカロライナ州エイキン郡ノースオーガスタでは、仕事中に9歳の娘を公園で遊ばせていたシングルマザーが、チャイルドネグレクトの容疑で逮捕された。もしも有罪の判決が下れば10年もの刑務所生活を命じられる可能性があると伝えられ、全米女性の間で是か非かと騒々しいことになっている。
6月30日に逮捕されたのは、マクドナルドのマネージャーとして働くデブラ・リン・ハレルという46歳のシングルマザー。小学校が休みに入り、人にあずけるお金の余裕もなかった。自分が仕事をしている間、9歳の娘レジーナちゃんは3週間にわたり連日のように近所の「サマーフィールド公園」へ。ボランティアによる無料のランチをもらい、時には5時間もそこで過ごしている様子を不審に思った人が警察に通報し、デブラは逮捕されて留置場へ。レジーナちゃんも保護されたが、デブラは17日間の親権はく奪が決定し、仕事も失った。
全米では同じような状況にある小学生が5%いると言われ、レジーナちゃんのように夏休みに表面化することがほとんどだという。治安が良くない町、そして誘拐により高い身代金を要求されることがある超高級住宅街。いずれにおいても子供の放置は身の危険に直結するリスクを伴うのは事実だが、この件に関して一方では「ヘリコプターペアレントを持つより、よほど子供のためになっているようにも思える」との意見が続出しているもようだ。これはヘリコプターのごとく常に子供を上から監視する親のこと。過干渉、過保護な上に、子供の人生の大切な決断においても親が決定権を握ってしまう。こういう親を持つと何歳になっても子は精神的自立が難しく、人間関係も苦手。共依存の関係から抜け出せないことが生活の端々で問題となってくるため、子供の自立心を尊重しのびのびとした育児を心がけようという風潮もあるのだ。
また近所の人々も『AP通信』の取材に、「その公園にはレジーナのような子がたくさん遊びにきていた。人も多く監視の目が行き届いて安全だし、水遊びやバスケも出来るため夏休みはたくさんの子供たちでにぎわっている。レジーナはただそこで遊びたかっただけ」と同情。母親が就労中は子供の世話をしかるべき施設や人に託す、これができずにいた低所得のデブラをいきなり逮捕するのはあまりにも非情だとしている。9歳の子供にも自分の意思があり、何かが起きたら自己責任だと割り切っていたハレル家。次の出廷は9月とのこと。全米のシングルマザーたちがその行方に注目しているもようだ。
※ 画像はwbtv.comのスクリーンショット。
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)