果てしなく広がる宇宙の神秘を捉えた映像を次々と地球に送り続ける「ハッブル宇宙望遠鏡」。またしても珍しい小天体の撮影に成功し、NASAがそれを公開して話題を呼んでいる。なんと光の尾を6本も持つ“彗星のような”天体なのである。
地上約600kmの上空を軌道として天体観測を続けている「ハッブル宇宙望遠鏡(Hubble Space Telescope 以下HST)」。この望遠鏡は未知の世界であった宇宙にかつてないほど近づき、様々な謎の解明に貢献し、撮影された無数の美しく貴重な天体写真に私達は大きく心を打たれる。そのHSTがこのほど大変興味深い小天体を発見し、“P/2013 P5”と名付けられたことをNASAが写真(こちらの画像は同HPのスクリーンショット)とともに紹介した。
実はハワイの天体観測の専門家らが今年8月、4台の望遠鏡で天体を観測し、それぞれの画像の微細な変化を検出する「パンスターズ(Pan-STARRS)」というシステムを用いて、火星と木星の間に小惑星が無数集まる「アステロイドベルト」という領域に不思議な光が存在することを発表。HSTが9月10日と同23日にその天体の撮影に成功した次第である。
さっそく「カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)」の研究チームが送られてきたデータをもとにこれを解析。“この天体は2億年前に天体衝突により砕け散ったある惑星の断片で、激しく自転することにより表面の物質が塵となって常に周囲に飛散しており、尾の長さ、強さ、方向はその時々で変化を見せる”と結論付けた。また、“このような天体はかつて見たことがない。非常に貴重な写真である”と高く評価しているもようだ。
ちなみに彗星とは、氷、塵、岩石などでできている太陽系小天体が、太陽に近づいた時に太陽が放つ熱で温められ、太陽風(高温で電離したプラズマ)を受けて後方にガスや塵を放出し、そこに光が反射することで美しい尾を引くものを指す。そのため彼らはこの天体を「彗星」と呼ぶことはなく、「彗星のような小天体」と表現している。
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)