ニューヨークのジョン・F・ケネディ国際空港で、核燃料や核兵器に使用される濃縮ウランの原料となるウラン精鉱の密輸を試みた、シエラレオネ出身の33歳の男が逮捕された。
逮捕劇の発端は、昨年5月にウェブサイト「アリババ」に掲載された、アメリカ在住のイランからのバイヤーを名乗る人物によるウラン精鉱購入希望の広告であった。『The New York Times』が報じたところによると、逮捕された男はブローカーとしてウランや金、クロムなどの鉱物を産する鉱山会社と提携し、中国やエクアドルといった国の機関にウランを販売した実績を持つことを主張。そのバイヤーに対しても、1000トンのウラン精鉱を販売するつもりがあると返答していた。
だがこの広告、実は米国国土安全保障省による偽のものであった。当然、男との間に成約した取引も全くの偽物であり、国土安全保障省員が扮した偽の“バイヤー”が、電話やメールで取引に関するやりとりを男と行っていたという。
偽の話が進む中、今年の8月にマイアミで取引が行われることが決定。男は国連の会議に参加するソーシャルワーカーに扮して、パリからニューヨークを経由しマイアミに向かうこととなった。それに先立ち、男からウラン精鉱の売買契約書が送付され、またウラン精鉱のサンプルも持って行くと知らされた国土安全保障省側は、これらの情報をもとに男を経由地ニューヨークで逮捕するに至った。
その後の捜査で、荷物として所持していた靴の踵部分に少量のウラン精鉱が発見されており、取り調べに対しても男はウラン精鉱の所持及びイランへのウラン精鉱密売への関与を認めているという。
裁判などの情報はまだ伝えられていないが、今後この男が有罪判決を受けた場合、懲役20年及び罰金100万ドルの実刑を受けるとみられている。
(TechinsightJapan編集部 椎名智深)