昨年7月クールに放送され一部で人気を博した『勇者ヨシヒコ魔王の城』(テレビ東京系)の続編『勇者ヨシヒコと悪霊の鍵』が始まった。
正義感は強いが素直過ぎることが弱点の勇者ヨシヒコ(山田孝之)。熱血漢の戦士・ダンジョー(宅麻伸)、微妙な呪文しか使えない魔法使い・メレブ(ムロツヨシ)、強気な村娘・ムラサキ(木南晴夏)と冒険を繰り広げる物語だ。
勇者の冒険ということでRPGゲームを基盤としている。ゲーム会社のスクウェア・エニックスが協力としてクレジットに記載されているため、人気ゲーム『ドラゴンクエスト』のキャラクターが出てきたり、効果音が度々使用されている。その露骨な使用と毎回繰り広げられるギャグやパロディも人気の理由だ。前作では、ドリフターズやAKB48の総選挙などをはじめ、気を抜いていると見落としてしまいそうな小さなネタが満載。もちろんドラクエネタもちりばめられている。分かる人にしか分からないレベルから誰もが分かるものまで、誰もが楽しめる仕様になっている。
低予算も売りのひとつ。オープニングタイトルに「予算の少ない冒険活劇」と入れたり、小道具が世界観に似つかわしい大学ノートに手書きで済ませるなど雑なところもある。低予算であることを逆手に取って笑いを誘っている。そんな低予算ドラマでありながら、前作では古田新太や小栗旬、続編では細田よしひこ、平野綾らがゲストとして出演する豪華さである。
このドラマを見ているとヨシヒコを演じる山田には本当に感心するばかりである。もともと好青年の役も多かったが、最近では、映画『クローズZERO』にはじまり『闇金ウシジマくん』など、少しガラの悪い役が多かったように感じる。それはそれで、彼にしか出せない迫力があり、当たり役も多い。そんな彼が、純真で騙されやすいヨシヒコを違和感なく演じているのはさすがの一言だ。
続編の『悪霊の鍵』では、前作で魔物を倒してから100年。再び魔物が復活してしまう。その魔物を倒すため伝説の勇者・ヨシヒコたちが復活する。復活早々、ヨシヒコたちの姿は老人であり波乱の幕開けだ。前作よりもパワーアップしたパロディの度合いにやり過ぎではないかと心配してしまう場面もあるが、ここまで忠実に再現されると逆に清々しい笑いだ。テレ東だからこそできたと思ってしまう不思議な感覚だ。
くだらないことに全力で取り組むことが面白さを生み出している。さらに、深夜の放送ということで、この面白さが分かるファンが集まったのかもしれない。何も考えていないようで、実は緻密に考えられている。『勇者ヨシヒコ』シリーズに脱帽である。
(TechinsightJapan編集部 洋梨りんご)