レディー・ガガ(25)が昨年9月、『MTV Video Music Awards』で着用し話題を独占したあの「生肉ドレス」が、動物の剥製作成の専門家の手によって保存され、ロックンロールの歴史に大きな功績を残したミュージシャンの記録を保存する「ロックの殿堂」博物館に、6月から特別展示されている。
ガガの「生肉ドレス」を保存するという重大な任務を引き受けたのは、カリフォルニア州バーバンクで、ハリウッドのセレブや富裕層の顧客を相手に剥製ストア『American Taxidermy』を営む、ブラジル出身のセルジオ・ヴィガロットさん(66)。セルジオさんはオハイオ州クリーブランドにある「ロックの殿堂」から昨年11月に連絡を受け、レディー・ガガの名前も、生肉ドレスの存在も知らずに仕事を引き受けたという。
「で、ドレスはどこにある?」とセルジオさんが、ドレスを共同プロデュースしたガガのヘッドデザイナー、ニコラ・フォルミケッティさんに電話で聞くと、ドレスは「エアコンの効いた部屋に置いてある」と言われたため、セルジオさんは驚いて「何だと? それじゃあウジ虫がわいてしまうじゃないか、冷凍庫にすぐ入れろ!」と告げたそうだ。
ドレスはアルゼンチン産ビーフの薄切りわき腹ステーキ肉12切れで作られていて、合計15kgの重さだったが、その後冷凍されてウジ虫もない状態でセルジオさんの元に到着した。しかし、肉を解凍したところ、やはり腐敗していた上に硬くなっていたため、保存作業は容易ではなかった。
作業は、肉の腐敗を止めるため、バクテリアを殺すところから始められた。漂白剤、ホルムアルデヒド、洗剤のミックスを肉に注射し、肉を柔らかくしてから、改めて「血の色」で染め直したという。
作業は、途中「ロックの殿堂」に見本を送り、出来上がりの承諾を得ながら進められたというが、最後はガガに似せたマネキンに、色を鮮やかに染め直した肉を貼り付け、完成。無事博物館に送られた。結局作業は3か月半もかかったという。
セルジオさんは、英『デイリー・メール』紙のインタビューに、「やろうと思えば、新たに全く同じ生肉ドレスを作れたが、ガガのチームはオリジナルドレスを保存することを選んだ。それを尊重しなければいけない。」と語ったという。セルジオさんは若かりし頃、ブラジルでロックバンドのメンバーとして活躍、全米をツアーして回った後に、アラスカ州でチャーターボートの船長をして生計を立てた。その後カリフォルニア州に渡り、手先の器用さを生かして剥製専門家に弟子入り。以後、独立しセレブ御用達の剥製専門家として名を知られるようになったという経歴の持ち主。彼のショップには、熊や鹿の剥製、レオパードスキンなどが所狭しと並び、ロックバンド『ガンズ・アンド・ローゼズ』のアクセル・ローズなど、セレブのクライアントばかりを抱えている。
こうして専門家の手によって永久保存された「生肉ドレス」は、ガガが子供時代に使っていたピアノや、ガガが昨年1月にグラミー授賞式で着用したアルマーニ製の「惑星の軌道ドレス」と共に、「Women Who Rock: Vision, Passion, Power」と題した展示の一部として、来年2月まで一般公開されている。興味と時間とお金のある方は、クリーブランドまで足を運んでみてはいかが?
(TechinsightJapan編集部 ブローン菜美)