口元が不気味なハリウッドきっての怪優といえば、スティーヴ・ブシェミ(53)であろう。その独特の風貌を生かして数々の映画に出演してきた彼が、歯列矯正をしない理由を語った。
スティーヴ・ブシェミと聞いてピンとくるなら、あなたは結構なハリウッド映画通である。たとえピンとこないにしても、『コン・エアー』や『アルマゲドン』に変人役として出演した気味の悪い俳優さんといえば「あの人か!」と思い出せるのではないだろうか。HBO製作の『Boardwalk Empire』という作品での主演でエミー賞にノミネートされているブシェミであるが、最近開催されたハリウッド記者らとの会談で、自らの歯についてズバリ語っている。
「どうにかしてやろうって言う歯科の先生だっていたさ。だけど俺は、歯を綺麗にしたりしたら職無しになっちゃうよって答えていたんだ。」
自分の弱点をむしろ強みにして成功したブシェミ、立派ではないか。トム・クルーズのような端整な顔立ちからはほど遠いものの、ブシェミはゴールデングローブ賞を受賞したこともある大物俳優。監督や脚本執筆をもこなす実力派としても知られている。
日本でも近年は歯列矯正が広く行われるようになり、非常に整った歯列をした若者が目立つようになった。アメリカでは「歯の美しさ」が顔立ちの美しさを決める基準とも言われ日本以上に歯列矯正がさかんであるが、ブシェミをハリウッドスターの座につかせたものは整っているとは言いがたいその口元であったというのだから、実に皮肉なものである。
しかしこのブシェミ、実はそのちょっと怖い風貌とは裏腹に、とても良い人なのだそう。911のテロ攻撃の後、かつて仕事で使っていたという消防士の制服を身にまとい、懸命な救助活動を行ったのもブシェミであった。そう言えば、見れば見るほど味がある良い顔ではないか。美容整形だ、アンチエイジングだと騒ぐセレブたちが多い中、自分の風貌を武器にして突出した演技力を生かせる映画界に君臨するに至ったブシェミ。セレブの自伝はいくらでもあるが、ブシェミの自伝があれば是非読んでみたいものである。ブシェミが脚本を書き監督も務めた1996年の『トゥリーズ・ラウンジ』という映画は、ブシェミの半自伝ともいえる作品なのだそう。いつか、ぜひ観てみたいと思う。
(TechinsightJapan編集部 ケイ小原)