writer : techinsight

衰退する地方農業に新たな光を。ソーシャルサービスを用いた新しい農家の取り組み『トラ男プロジェクト』

多くの農家が抱えている後継者問題。キツイ・キタナイ・キビシイという、いわゆる3Kのイメージが、未だ地方農家では拭えていないところが多い。併せて、TPPや風評被害などのイメージダウンに悩まされている農家もある。
そんな苦境に立たされている地方農家を救うべく立ち上げられた、ソーシャルサービスを用いたPRプロジェクトがある。

これは、生産者と消費者を顔の見える状態で繋げようとソーシャルサービスを利用したビジネスモデル『トラ男プロジェクト』だ。

北秋田出身の武田氏が、学生時代にふとしたことから秋田の米農家の実態を知り、これではいけないと一念発起し昨年から行動を開始した。

「実は、農業というのは昔と違って採算が取れていないところが多いのです。なぜ農業を続けているのかというと、“お客さんに喜んでもらえるのが嬉しいから”ということだけなのです」

とはいえ、開始当初は身近に農業に携わる人はなく、何度も秋田に足を運び、農家を何軒も訪問しヒアリングを行ったという。その際には当然ながら一笑に付されたり、胡散臭がられたりといったこともあったそうだが、結果として100軒を超える農家から話を聞き、うち3軒の農家から協力を得るに至った。

TAKUMI・YUTAKA・TAKAOの3名とともに武田氏がスタートした『トラ男プロジェクト』の『トラ男』とは、「トラクター×男前」を略したもの。

このプロジェクトの面白いところは、地方や農業従事者には馴染みの浅いblogやfacebook・twitterといったソーシャルサービスを用い、PRを行っていることだ。また、プロジェクト自体についてもとことんエンターテイメント性を持たせ、メンバーの名前をローマ字表記にしたり、キャッチコピーを設定したり、それぞれの農法を(地下水脈をアンダーグラウンドウォーターウェイと表現するなど)遊び心を持って言い換えるなどしている。

「今までは検索で通販サイトへたどり着くというのが一般的でしたが、これからはソーシャルの口コミで誘導されてくるというのが主流になると思っています」

と、日本初のソーシャルファーマー集団を率いる武田氏は語る。

すでにプロジェクトの効果は昨年から現れ始めている。各農家が持つ、いわゆる「余剰米」500kgを完売させた。主な購入層は東京都周辺といい、一般的なお米の価格と比較して倍近い値段でありながら、一度購入したユーザーが二度三度とリピートしていくという。

今年は新たな試みとして、クラウドファンディングサービス『READYFOR?』にて支援者を募る先行販売も行っている。
今月27日までを期限として行われている先行販売では、1,000円~39,800円までの商品が用意され、一部商品には生産者のサイン入り生写真や同プロジェクトで開催するイベントへの招待券など、農家がここまでやるか、と思わせる特典が付与されている。

プロジェクト開始から一年が過ぎ、生産者と消費者をつなぐというひとつの目標であるツアーを実施できたことで手ごたえを感じながらも、まだまだ課題は多いと語る武田氏。

しかし、当初このプロジェクトに懐疑的だった農家の方々からも参加を希望する声も多く、他県から同様のプロジェクトを行いたいというオファーもあるのだという。

「“お米を食べる消費者と、お米を作る農家が笑顔になれる日本をつくる”という夢に一歩近づけたので、さらにそれを目指して頑張りたいと思います」

二年目を迎えたソーシャルファーマー集団『トラ男プロジェクト』。ソーシャルサービスを用いて新しい農業のあり方を模索する彼らの試みはこの先も進化し続けるようだ。

■ソーシャルファーマー集団『トラ男プロジェクト』 http://www.torao.jp/
■クラウドファンディングサービス『READYFOR?』 https://readyfor.jp/

(TechinsightJapan編集部 北島要子)