writer : testjournalist

【ドラマの女王】やっと錦戸と水川が“親”に。ラストスパートで“迷走”から抜けた「犬を飼うということ」。

実は今クールの金曜日はドラマラッシュで大変なことになっているのだ。22時からは『生まれる。』(TBS系)で大倉忠義、23時15分からは『犬を飼うということ~スカイと我が家の180日~』(テレビ朝日系)では錦戸亮が出演しているという関ジャニ∞タイムがあり、そのあと『シマシマ』(TBS系)と関東では『マジすか学園2』(テレビ東京系)が間髪入れずに放送されている。このような曜日も珍しい。そんなドラマ三昧な金曜日だが、終盤に入り頭一つ飛び出した感のある作品がある。それが『犬を飼うということ』だ。

21歳でできちゃった結婚した本郷勇次(錦戸)と幸子(水川あさみ)は8歳の大(山崎竜太郎)と6歳の眞子(久家心)の二児の親。サラリーマンである勇次の収入だけでは生活は苦しく幸子がパートに出てやり繰りしている。家計は苦しくても家族でハワイ旅行をするためにお菓子の缶に貯金する微笑ましい一家である。しかし、それぞれが少しずつ言い出せずにいる小さな不満も抱えていた。そんなある日、眞子が犬を拾い、なりゆきで飼うことになる。物語はそんな眞子の視点から描かれている。

実は記者はこのドラマをはじめの数話を見たまま最近まで見ることができずにいた。

親である錦戸と水川の二人があまりにも幼すぎて見ていられなかったのだ。ドラマ上では30歳。ふたりの実年齢からすると3歳程度年上の設定である。が、とてもそうは見えない。童顔ということもあるが、そもそも親の顔ではなかったのだ。実生活でも親になっていないのだから無理もないのだが、ここまで板についていないのもどうかと思うほどだった。

水川の肝っ玉母ちゃんぶりはサバサバしていて気持ち良いのだが、母親というよりはお姉ちゃんのようである。錦戸に至っては子どもとどう接していいのか分からない様子が垣間見え、やはり父親ではなくお兄ちゃんのよう。さらに言えば、どこか他人行儀で、たまにしか会わない親戚のお兄ちゃんが急遽子守りを頼まれているようにしか見えなかった。ここは親子ではなく4兄妹の方がまだしっくりきたかもしれない。

崩壊しかけた家族が犬とのふれあいで何かを学ぶ。そんなコンセプトのわりにはスカイツリー(通称・スカイ)と名付けられた犬に助けられる場面もそれほどなく、その面では同じ犬が出てくる『マルモのおきて』の方が面白いと感じていた。

そんなどうもしっくりこないという印象しかなかったこのドラマだが、最終回を目前に久しぶりに見てみると、驚いたことにちゃんと「家族」になっていたのだ。まとまりのない家族がまとまったというよりは「家庭崩壊」という設定を掴めずに迷走していた時期がやっと終わり、制作側が作りやすくなったようにも感じるが。

だが同時に、個々の表情にも変化が見られたのだ。錦戸は相変わらず30歳には見えないものの、いい顔になっていた。子どもたちとの距離感もだいぶなくなり、すごく優しい笑顔を見せるようになっていた。先日の放送の中で、かつての上司・窪田松夫(泉谷しげる)を交えての家族団らんシーンはとても微笑ましく、素晴らしいシーンだった。水川もだいぶ角が取れて母親らしくなっていた。

折り返して良くなるドラマはいくつかあるが、まさかこのドラマがこのように進化を遂げるとは思ってもみなかった。ここから終盤に向けてますます良くなっていくのだなと、期待に胸を膨らませながら見た次回予告は、最終回を知らせるものだった。確かに、後半まくしたてるようだった。ラストへ向けてペース配分を間違えて慌てて帳尻合わせをしているような進め方だったが、展開に無理があるわけではなく、少し急いで進めているなという印象くらいで悪い進め方ではなかった。けれど、こんなことならばしっかり見ておけば良かったと少し残念ではあるが、仕方がない。ラスト一回、スカイによって本郷家、そして出演者がどれだけ変わったのかじっくり見届けたいと思う。
(TechinsightJapan編集部 洋梨りんご)