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【ドラマの女王】逆ハーレムなのにトキメキが少ない! 「イケパラ化」し切れない『アスコーマーチ』

前クールの月9で一気に注目女優の座についた武井咲。来年の大河ドラマの出演も決まるなど順調な様子だ。そんな彼女の初主演ドラマ『アスコーマーチ 明日香工業高校物語』(テレビ朝日系)。同名の少女漫画が原作だ。月9ではその顔立ちから大人びた印象を残した彼女が、どのような顔を見せるのか。

吉野直(武井)は第一志望のお嬢様学校への受験に失敗し、ひょんなことから男子ばかりの県立明日香工業高校(通称・アスコー)に入学する。新入生の女子は三人、一人は二日目に退学してしまう。更衣室は校内に一つ、女子トイレも二つ。どちらも入り口には鍵、と女子に優しくない環境に馴染めず、普通科への転入を考える。けれど、転入するには実技の成績がよくなければと条件を出され、実技の授業にも力をいれ始めていく。

月9に比べれば、だいぶ等身大で演じているように見える。「あ、この子こんな顔するんだ」「なかなか可愛らしい仕草もするんだ」と、武井の新たな魅力も見られる。工業高校が舞台ということで、男子ばかりの逆ハーレム状態の武井。『花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~』と『ごくせん』を足したような感じにも見えなくない。しかし、何かが足りない。毎回、一つの事件を軸に進むが他の些細な出来事が多すぎて、やや収拾がついていないように見える。それぞれの立場を明確にしたいのかもしれないが、もう少しシンプルにした方が分かりやすくなるのではないだろうか。
それに、この手の学園ものは生徒たちの騒がしい印象だけで終わってしまいがちだが、アスコーはこれと言ってひときわ目立つ生徒もいない大人しい印象だ。武井を取り巻く松坂桃李と賀来賢人の二人も対極に位置するはずなのに、たまに見分けがつかなくなる始末。見分ける方法が永井大とピースの綾部祐二に似ているかというだけで、もう少し味が欲しいところである。

その分、直の祖父役の笹野高史をはじめとする大人たちが良い味をだしている。担任の勝村政信の「先生やるときはやるんだよ」と自分で言ってしまう頼りなさそうな雰囲気、女子生徒の逃げ場である保健室で直の相談にのる養護教師に白石美帆のがさつさ、菊川怜の母親役は(若すぎではないかと驚いたが)、生徒たちと実力の差がつきすぎず、ちょうど良いバランスを保っている。そこに彼らの上手さを感じた。
何より、「電車男」を見てから白石のイメージが180度変わった記者は、白石ががさつなキャラクターで出てきた瞬間にとても安堵した。それほど当たり役だったと思う。見応えのある女優になった。

工業高校ならではの実技の授業など、あまり知られていない世界を見ることが出来るところは面白い。何より、見よう見まねでオルゴールを作ることが出来ることに驚いた。しかも壊れたオルゴールを知識のない直が直してしまうなど、無茶ではないかという設定もあるが、若者が頑張っている姿を見るのは身の引き締まる思いだ。

あとは、何かとクラスメイトに突っかかる竹内和也を演じる瑛太の弟・永山絢斗が今後キーパーソンになりそうなので、彼の活躍でこの物足りなさが改善されることを期待したい。
(TechinsightJapan編集部 洋梨りんご)