writer : techinsight

【名盤クロニクル】渾身のブロウと重戦車級ベース コールマン・ホーキンス「ジェリコの戦い」

(ジャンル:ジャズ)

人間、加齢とともにコルトレーンやアーチー・シェップなどの硬派なジャズが苦手になってくるものだが、十分硬派でありながら、ゴキゲンなノリで聴くことができ、またオーディオ的にも魅力的な名盤が、今回紹介するコールマン・ホーキンスの「ジェリコの戦い」である。

本作のオリジナルタイトルは「HAWKINS! ALIVE!」であるが、日本では2曲目に収められた黒人霊歌オリジナルの「ジェリコの戦い」の名で知られている。

ホーキンスのテーマ吹奏に続いて、メイジャー・ホリーの重低音ベースが炸裂し、そのままカルテット一丸となって戦いの音楽を奏で始める。

ホーキンスのソロが終わったあと、名手トミー・フラナガンが、これ以外あり得ないというような絶妙のタイミングで、流麗なフレーズでソロを弾き始める。名脇役の面目躍如であり、フラナガンの数あるソロの中でも第一級に据えるべき名演である。

そして、本演のハイライトの一つと言ってよいであろう、メイジャー・ホリーのベースアルコ弾きと自分のハミングをユニゾンで聴かせるソロに入る。
このパートは、多くのジャズファンを唸らせた素晴らしいソロである。

その後に続くホーキンスの音階の上下を繰り返すパートは、明らかに本作の元になった旧約聖書「ヨシュア記第6章」の次の記述を模したものであろう。

「七人の祭司たちは、雄羊の角のラッパ七本を携えて、主の箱に先立ち、絶えず、ラッパを吹き鳴らして進み、武装した者はこれに先立って行き、しんがりは主の箱に従った。ラッパは絶え間なく鳴り響いた。」

タイトルチューンばかりが有名だが、オープニングの「オール・ザ・シングズ・ユー・アー」もアップテンポのゴキゲンな演奏であるし、3曲目の「マック・ザ・ナイフ」も、やや軽い感じであるが、人気曲であり、オイシイ名盤と言えるだろう。

オーディオマニアにとっては、メイジャー・ホリーの生々しいベースの音をいかに再現しつつ、全体のバランスを取るかという点で、取り組み甲斐のある録音である。

(収録曲)
1. オール・ザ・シングズ・ユー・アー
2. ジェリコの戦い
3. マック・ザ・ナイフ
4. 町の噂
5. ビーン・アンド・ザ・ボーイズ
6. イフ・アイ・ハド・ユー
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)