writer : techinsight

【名盤クロニクル】パーカー派を貫いた逸材の名盤 ソニー・クリス「ジス・イズ・クリス」

(ジャンル:ジャズ)

1950年代にデビューしたアルトサックス奏者の大半は、ビ・バップ期の巨匠チャーリー・パーカーの影響を受けているが、やがていくら精進してフォローしてもパーカーには到達もできず、超えることもできないことを悟り、方向転換を図っていた中、生涯、パーカー流のプレイを信条として、ある部分ではパーカーを超えるインスピレーションを見せたプレイヤーがソニー・クリスである。

ソニー・クリスの才能は、本作「ジス・イズ・クリス」の1曲目に置かれた「ブラック・コーヒー」で聴かれるブルージーなフレージングと絶妙な原メロディの解体ぶりで味わうことができる。

ペギー・リーの歌唱で有名なこの曲は、あまり器楽奏者が取り上げることがないが、クリスはスローなバラードを、聴く者をして「うーむ・・」と唸ることしかできない、絶妙なフレージングで聴かせてくれる。

じっくり歌い込むというよりも、速いパッセージを織り込みながら、攻め込む感じのプレイである。

それでいて、作為的なところを一切感じさせないところが、天性の才能である。

日本人で才能があると言われている若い女性アルトサックス奏者がいるが、ソニー・クリスの演奏と比較してみると、まるでお嬢さん芸に聴こえてしまうくらいである。

5曲目に置かれた「サンライズ・サンセット」は、ミュージカル「屋根の上のバイオリン弾き」で有名な曲だが、ここではテーマメロディをピアノに弾かせて、クリスは自在に飛びかうアドリブフレーズを最初から繰り出しているのも、心地よい。

選曲の良さもあって、ジャズ初心者にも馴染みやすいアルバムなので、ぜひ聴いてみて、もし好きになれたら、ジャズ一筋なオヤジに「ソニー・クリスの”ジス・イズ・クリス”は、いいッスよねぇ」と言ってみるとよいかもしれない。

もしかすると、ビールの一杯も奢ってもらえるかもしれないが、こってりジャズ談義を聞かされるかもしれないので、その辺は注意して欲しい。

(収録曲)
1. Black Coffee
2. Days of Wine and Roses
3. When Sunny Gets Blue
4. Greasy
5. Sunrise, Sunset
6. Steve’s Blues
7. Skylark
8. Love For Sale
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)