writer : techinsight

【名盤クロニクル】もうひとつのプログレスーパートリオ UK「ナイト・アフター・ナイト」

(ジャンル:ロック)

2011年4月に来日が予定されているプログレッシブ・ロックの雄UKの強烈なライブアルバムである。
結成から何度かのメンバー異動を行った後、最終的にエディ・ジョブソンのキーボード、ジョン・ウェットンのベース&ヴォーカル、そして超人ドラマーのテリー・ボジオの3人によるテクニカル集団として、すでに退潮気味だった英国プログレの最後の華として輝いた。このアルバムはその3人編成での日本公演の録音を収めたライブ音源である。

プログレッシブ・ロックというジャンルは、1970年代前半に大きな発展を遂げたが、1976年に始まるパンクムーブメント/ニュー・ウェイヴの勃興や、時代の空気の移り変わりにより、すでに古い音楽と見なされるようになっていた。

しかし、そうした時代の流れも歴史となった現在、当時のロンドンパンクやニュー・ウェイヴが今となっては古めかしい音に響くのに対して、このUKのライブアルバムの完成度の高さは、30年以上を経過しても新鮮かつ衝撃的である。

プログレッシブ・ロックの快感の一つとして、複雑な変拍子をカッコよく決める演奏というのがあるが、本アルバムの後半、「Alaska」~「Caesar’s Palace Blues」に至るまでの、息を呑むような変拍子の嵐と、テリー・ボジオのドラミングは筆舌に尽くしがたい。

また、オルガンによるハーモニーとシンセサイザーによるギター的プレイ、そしてエレクトリックヴァイオリンを使いこなす、立ち回りの良さも圧巻である。

特にジョブソンのエレクトリックヴァイオリンの音色の炸裂具合は、最終曲「Caesar’s Palace Blues」で十分に堪能できる。

また、あまり語られることがないが、ジョン・ウェットンのヴォーカルから立ち上るダンディズムも健在だ。

UK名義での活動は、80年代以降は行われていないが、エディ・ジョブソンのプロジェクトにおいては、UKの曲がしばしば演奏されている。

2011年の来日においては、スタードラマーのテリー・ボジオがいないことが残念であるものの、ウェットンとジョブソンの二人が顔を揃えることで、栄光の70年代サウンドの再現が期待されるところである。

プログレッシブ・ロック界でスーパートリオと言えば、エマーソン・レイク・アンド・パーマーが真っ先に想起されるが、活動期間が短かったとはいえ、ジョブソン・ウェットン&ボジオこと、UKの名も連ねるべきであろう。

(収録曲)
1. Night After Night
2. Rendezvous 6:02
3. Nothing to Lose
4. As Long as You Want Me Here
5. Alaska
6. Time to Kill
7. Presto Vivace
8. In the Dead of the Night
9. Caesar’s Palace Blues
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)