コンサートでの「熱唱」が思わぬ「炎上」を起こしてしまった。先日、南アフリカでコンサートを開催したU2。ところが、ボーカルのボノの歌った曲が、暴力を擁護するものだとして論争の火花を散らしている。反アパルトヘイトのメッセージを込めて歌ったボノ自身は、当惑する様子を見せている。
日曜日の夜にヨハネスブルグで開かれた「U2 360° コンサート」。会場近くの電源ケーブルを盗まれ開催が危ぶまれていた同コンサートだが、今度は反アパルトヘイトの歌詞を巡る論争に巻き込まれてしまった。ネット上や、ラジオのトークショー番組などでは批判が相次いでいる。
今回、問題となっているのは、歌詞に含まれている「Shoot the Boer」という言葉。この「Boer」という単語は、18世紀に南アフリカへ入植した人々やその子孫を指しているが、一方で侮蔑的な意味合いも含んでいる。このことから「入植してきたボアの人たちを撃て」と解釈できるコンサートでの歌詞は、暴力を支持するものとして大きな批判を招くこととなってしまった。
「これは憎悪発言だ! 彼らは、南アフリカでの我々の歴史を知らない! とても微妙な話題なのに!」
ラジオのトークショー番組でこの話題を放送したところ、リスナーからは抗議の電話まで掛かってきたという。
一方、「アパルトヘイトと立ち向かえ」というメッセージを込めて歌ったボノ自身は、思わぬ炎上に当惑気味だ。アイルランド出身のボノは、子供時代に北アイルランドの独立をめぐり歌われていた民族音楽を例にあげながら、アパルトヘイトを巡る人々の闘いを表現したのだと説明している。
そんな彼が「ボクが子供の頃に、叔父がよく歌っていた曲を覚えているよ。」と語る当時の民族音楽は「銃を持って立ち上がれ」と呼びかけるものであったと言う。
しかし、「場面によっては、歌うべきじゃない曲もあるね。いつ、どこで歌うのかということさ。」と語るボノは、「Shoot the Boer」という言葉が、微妙な歌詞であったことにも理解を示している。複雑な背景を持つ南アフリカにおいては、彼のコンサートで込めたメッセージも裏目に出てしまった。
(TechinsightJapan編集部 クローン中山)