ムバラク大統領の退陣を求める反政府派のデモが拡大しているエジプトの首都カイロ。デモの中心地となっている広場には、大統領支持派も乗り込みはじめ、反政府派との衝突で死者も出る大混乱となっているが、これを取材中の米CNNの人気キャスター、アンダーソン・クーパー氏(43)のクルーが、大統領支持派に頭や体をパンチされる暴行を受けた。クーパー氏に大きなケガはなくクルーも無事に逃げ切ったものの、他にも各国のジャーナリストが暴徒化した市民に襲われていて、危険な状態が続いている。
「落ち着け!」と何度も暴徒に呼びかけるクーパー氏が足早に逃げようとするところを、数十人の暴徒が囲み頭や体を小突いている。何者かが水をクルーにまき散らし、レンズに水がかかる。CNNのカメラマンが、カメラを体で守りながらこっそりと撮影を続けていたカオスな映像が放送され、全米に衝撃が走った。
若白髪がトレードマークのクーパー氏は、CNNのニュース番組「アンダーソン・クーパー360°」の人気キャスターで、事件事故紛争などすべて自分で現地に乗り込み、じかに体当たり取材するスタイルが支持を得ている。今回のエジプトにもすぐに現地入りし、連日カイロから臨場感あふれる中継を行っていた。
クーパー氏のクルーは、タハリール広場近くで反政府デモを取材していたところ、ムバラク大統領支持派に取り囲まれ押しのけられた。カメラマンの男性とクルーの女性も青あざができるほど叩かれ、命からがら現場から逃げ帰ったが、重大なケガには至らなかった。その間エジプト軍の兵士は、何もせずただ見ていただけだったという。
クーパー氏は少なくとも10回は頭を叩かれたそうで、ネット新聞ハフィントン・ポストの取材に「頭を叩かれたのは初めてだから、印象深い。」と冷静に襲撃を分析している。今まで様々な危険地取材をしてきたクーパー氏だが、直接襲撃を受けたのは今回が初めてだったそうだ。今回のエジプトのデモは、CNNだけではなくAP、BBCなどのジャーナリストも取材中に市民から暴力を受けたほか、ABCやCBSなどの大物キャスターらも身の危険を脅かされる場面に遭遇していて、現地の情勢は悪化するばかりだ。
クーパー氏は名門ヴァンダービルト家の御曹司という生い立ちもさることながら、その青い目とシャープなルックスにファンも多く、ジャーナリストとしての実力に加え、バラエティ番組の出演もこなす柔軟さが人気で、CNNのエースと言われている。今回の件で心配したファンは数多いだろうが、クーパー氏は今後もしばらくはエジプトに残り取材を続けるそうだ。それにしても身の安全には十分に気をつけてほしい。
(TechinsightJapan編集部 ブローン菜美)