フロリダ州マイアミのビスケーン湾の砂洲にグランドピアノが置かれ、誰が何のためにやったのか、憶測が憶測を呼び全米で話題となっていたが、地元に住む16歳の少年が自分が置いたと名乗り出た。少年は、ピアノを砂の上に置いてアートな写真を撮り、名門大学の入学願書に添付して、自分の才能をアピールするためだった、と説明しているという。
「砂の上のピアノ」の謎がとうとう解けたが、結末は人々が期待していたほどロマンチックなものではなかった。この少年はニコラス・ハリントン君で、地元高校に通う16歳。ピアノの設置の様子などを記録したビデオや写真を所有していたことが決め手となり、砂の上のピアノの“本物の仕掛人”であることが明らかになった。
ニコラス君の父マークさんは、米TVドラマ「バーン・ノーティス 元スパイの逆襲」のセットなどを手がけたプロのデザイナー。その関係で、以前大道具に使った古いピアノがガレージに眠っていた。それを見たニコラス君は、美しい海とピアノを絡めたアートを作り出そうと思いつき、新年明けて間もない2日、兄や隣人の手を借りて約300kgの重いピアノをボートに乗せ、ビスケーン湾砂州に置いた。その後ピアノに火をつけた状態で、弾いている振りをしている自分の写真を撮影し、憧れのクーパー・ユニオン(ニューヨーク市にあるアート系の4年制大学)の願書に添付するつもりだった。
奇想天外ともとれるニコラス君の構想に、アートに造詣の深い両親が「いいね」と支持を示していたこと、また通っている地元高校の先生も、入学願書にハクを付けたいという彼のアイデアについて承知していたそうだから、いやはや人騒がせな少年もいれば、それを容認する大人たちもが“グル”だったわけだ。ニコラス君はAP通信に対し、「風変わりで非現実的な経験を作り出したかっただけ。悪ふざけとはとられたくない。」と話しているが、騒ぎが大きくなり、ピアノは自分が置いたと主張する人が複数出て来たのを見て、自分から名乗りを上げた。
しかし「犯人」が分かったことで当局はいよいよ「お叱りモード」に突入。フロリダ州とマイアミ・デード郡の海洋環境保護担当者などが、ハリントン家を訪れ「24時間以内にピアノを撤去しなければ、重罪と認め5000ドルの罰金か、さらなる厳罰に処す」と通告した。あわてたニコラス君らがピアノを撤去しようとしていた矢先、ピアノはこつ然と消えてしまった。
騒動の行方をニュースで見守っていた地元の第三者の男性が、ピアノをさっさと自腹でサルベージし、持ち帰ってしまったというのだ。この男性はCarl Bentulanさんという地元のデイトレーダー兼ミュージシャンで、ピアノは置き去りにされたのだから、苦労してサルベージした自分に持ち帰る権利がある、と主張している。 Carlさんは、10歳になる自分の息子が話題のピアノを欲しがっていて、今後は自宅のリビングに飾るつもりだ、と地元紙に語っている。
お騒がせ少年ニコラス君一家は「これだけ話題になったピアノは、ぜひ自分たちが持ち帰りたい」との意向を示していただけに「あのピアノ、返してよ!」と、今後Carlさんに訴えかけていくのかどうか、騒動の行方が最後までちょっと気になる。しかしここまで来ると「誰が置いたか謎のピアノ」と、ロマンチックなミステリーのままだった数日前が懐かしいような気がする。
(TechinsightJapan編集部 ブローン菜美)