(ジャンル:ジャズ)
寒い冬を吹き飛ばそうというので、ボサノヴァやレゲエなど、夏系音楽を聴くというのは実はあまりオススメできない。
たとえは悪いが、昭和時代に「○○ハワイランド」なる施設に行って、ハワイ気分を味わっていたのと同じような気分になるからである。
むしろ、冬の冷たい空気を優雅に味わえる音楽を選んだ方がよいだろう。そんな音楽がキース・ジャレットの1978年の名盤「マイ・ソング」である。
ジャズ・ピアニスト、キース・ジャレットは即興による長大なソロピアノアルバムや、さまざまな音楽の融合を試みたカルテット作品、そして80年代以降のスタンダードへの探求やクラシックへの取り組みなど、どれをとっても野心的な作品群を生み出している。
そんなキースが、北欧のミュージシャンと結成した通称「ヨーロピアン・カルテット」による傑作が「マイ・ソング」である。
キースの壮大な作品群の中では、あまり目立つ作品ではないが、楽曲の美しさと親しみやすさにおいて、長く愛されている名盤である。
特に2曲目の表題曲「マイ・ソング」と4曲目の「カントリー」のメロディの美しさは格別で、「ジャズは難しくて・・」という人でも素直に好きになれる曲である。
そして、このアルバムで特徴的なのは、フロントを務めるヤン・ガルバレクの、およそジャズ的ではない、北欧的な響きを持ったサックスである。
このサックスの音色が、寒い冬にピッタリの情感を醸すのである。
日本の太平洋側気候に特徴的な冷たい空気と晴れ渡った空が、ガルバレクのサックスとよく似合う。
さらに本作は、リズム面での多彩もあることも見逃せない。8ビートや、カリプソ風さらにはフリージャズまで網羅する点も注目である。
キースの作品は、1枚1枚が新たな感動そして驚きとの出会いである。
マンネリと揶揄されることもあるスタンダードの演奏も、楽曲へのアプローチの多彩さは、表層的にアレンジや編成を変えただけの「変化」を装うマンネリ・ミュージシャンよりも、ずっと大きな発見がある。
キース・ジャレットを聴いたことがないリスナーに、まずオススメしたいのが、今回紹介した「マイ・ソング」である。
(収録曲)
1. クウェスター
2. マイ・ソング
3. タバルカ
4. カントリー
5. マンダラ
6. ザ・ジャーニー・ホーム
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)