writer : techinsight

【名盤クロニクル】2000年代辺境プログレの大傑作 MINDFLOWERS 「IMPROGRESSIVE」

(ジャンル:ロック)

辺境プログレとは、プログレッシブロック・バンドのうち、イギリス、フランス、ドイツ、イタリアなどの大国を除くヨーロッパ大陸各国及び南米や中東などのバンドの総称である。
今回紹介するのは、70年代プログレの持っていた大作志向とテクニカル志向を見事に継承して2000年代に鮮烈デビューを飾ったハンガリーのバンドMINDFLOWERS(マインドフラワーズ)の「IMPROGRESSIVE」である。

ハンガリーのバンドは、マニアの間では別に辺境でもなく、単に東欧ロックと呼ばれているが、英米中心で見れば十分辺境で、しかも変わった音楽の宝庫である。

プログレの持っている要素として、「大作志向」「変拍子の多用」「叙情性」「ドラマ性」などが挙げられるが、MINDFLOWERSは、これらを見事に統合した演奏を繰り広げる。

あえて分類すれば「ジャズロック系プログレ」になるが、凄まじいのは、変幻自在に移り変わる、変拍子の数々である。

ラストに収められた演奏時間20分を超す大作「Talk With Myself」は、ほぼ全編、変拍子の移り変わりで聴かせる作品となっている。

叙情的なギターソロから、突然4ビートになってみたり、7拍子や11拍子などの奇数拍子を次々繰り出したかと思えば、泣きのギターと哀愁キーボードによる叙情プログレマニア向けサービスもしっかりやっている。

さらに、80年代フュージョン風展開や、ハンガリーらしい重苦しい叙情、効果的なレガシー・シンセサイザーも顔を出し、20分間があっという間に過ぎてしまう傑作である。

アルバムタイトルの「IMPROGRESSIVE」とは、「非プログレ」と「インプロヴィゼーション(Impro)がアグレッシブ」をかけた、ダブルミーニングのようである。

編成は、ギター、ベース、ドラムス、キーボードに部分的なヴァイオリンが加わる。全員大変なテクニシャンであるが、テクニックの誇示に聴こえず、ジャズとは異なる、ロック独特の「野暮ったさ」をきちんと残している点も高評価である。

なお、本作はAmazonには在庫がない。disk union新宿プログレッシヴ・ロック館などの専門店でのみ取り扱われているようだ。

(収録曲)
1. Red Spider
2. Falling
3. Sick Spirit
4. Why?
5. Why not?
6. Crying Skies
7. Knowing the Path
8. Flo’s Kisses
9. Talk with Myself
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)