本日12月8日は、ジョン・レノンの没後30周年命日であるとともに、今年2010年は生誕70周年でもある。毎年この日になるとジョンを追悼するイベントが開催される。
しかし、逝去当時とは違い、近年はどちらかといえば「愛と平和を祈念する日」になっており、若い世代には「ところで、ジョン・レノンって誰?」という、もはや伝説の意味すらわからない伝説となっているようだ。
そこで、改めてジョン・レノンの名盤として、ザ・ビートルズ解散後に満を持してリリースされたファースト・アルバム「ジョンの魂」を紹介してみたい。
まず、最大の基本であるが、ジョン・レノンはザ・ビートルズのメンバー4人のうちの一人であり、重要なソングライターである。
ソロ・アーティストとしてのジョン・レノンは、妻であるオノ・ヨーコとの一蓮托生であり、1960年代末にはアヴァンギャルド・アーティストであるヨーコの影響が大きい3枚のアルバムを発表している。
本作は、ビートルズ解散後の1970年に出されたジョンのソロ作であり、ジョン・レノンの魂の吐露ともいうべき内容となっている。
邦題を「ジョンの魂」としたレコード会社の判断は秀逸であったというべきであろう。
ジョン・レノンの代名詞と言うべき「イマジン」は、この次のアルバムで登場するが、なぜ平和を「夢想」する歌が書かれたのかを知るには、本作「ジョンの魂」を聴く必要がある。
これは、自分自身の過去、そして元ビートルズとして輝かしいキャリアを披露することもできたジョンが、ビートルズさえも葬り去ろうとする凄絶なアルバムである。
冒頭に収められた「マザー」は、弔いを暗示する重い鐘の音で始まる。アルバム全編がギターまたはピアノ、ベース、ドラムというシンプルな編成によるサウンドで構成される。
そして、極端に切り詰められた言葉によって、自らの心情を吐露していく曲が並ぶ。
すでに知られるところであるが、本作のハイライトは10曲目「ゴッド」である。
「神は我々の不幸を測る尺度だ」という有名なフレーズで始まるこの曲は、I don’t believe in ~という繰り返しによって、世の中で神聖とされているものをすべて否定していく、極めてセンセーショナルな歌詞なのであるが、この後ジョン・レノンが傾倒していったのが、いわゆる「愛と平和」に関する声明である。
「ゴッド」に込められた心境をさらに推し進めたのが「イマジン」であるとも言える。
「イマジン」はしばしば左翼主義的だと誤解されることがあるが、その有名な歌詞「Nothing to kill or die for and no religion, too」は、主義や主張や正義といったものすら無い世界を「夢想」する自分を歌っている。
もちろん、ベトナム反戦運動が世界的な広まりを見せている中で作られた曲であることは考慮しなければならないが、時として「平和の念仏」のようにして歌われる「イマジン」を本当に理解するために、没後30周年の今、改めてソロアーティストとしてのジョン・レノンのルーツである、「ジョンの魂」を聴いてみることをオススメしたい。
(収録曲)
1. マザー(母)
2. しっかりジョン
3. 悟り
4. ワーキング・クラス・ヒーロー(労働階級の英雄)
5. 孤独
6. 思い出すんだ
7. ラヴ(愛)
8. ウェル・ウェル・ウェル
9. ぼくを見て
10. ゴッド(神)
11. 母の死
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)