writer : techinsight

【名盤クロニクル】パンクへの逆襲としての様式美 マイケル・シェンカー「神」

(ジャンル:ロック)

ロックミュージックの様式美を高らかに宣言する1980年代初頭の大名盤である。80年代のギターヒーローとして存在感を誇示し続けた御大マイケル・シェンカーのソロ第1作である。
なにしろ邦題がすごい。「神」である。

1970年代後半に吹き荒れたパンクムーブメントが、音楽シーンに与えた影響は多大なものがあるのだが、いわゆるハードロック/メタルに関しては結局大した影響力はなく、あえて言うならば、従来のハードロックが持っていたブルース色が払拭されたということにあるだろう。

そして、このアルバムが素晴らしいのは、楽曲ごとのバリエーションの豊かさと、シェンカーの繰り出す、中低音域を主体にしたフレージングにある。

マイケル・シェンカーは、リフのカッコよさとソロの快感を併せ持つ希有なギタリストである。

2曲目の「クライ・フォー・ザ・ネーションズ」は、ポップ風なイントロで意表を突いた後、どっしり構えたヘヴィーリフのミディアムテンポで歌い上げる。

4曲目の「ビジョー・プレジュレット」は、クラシカルなムードの漂う短い楽曲であるが、こうしたムードは1970年代から引き継がれているもので、メタル系ロックの重要なエッセンスとなる。

そして、6曲目のインスト曲、「イントゥ・ジ・アリーナ」では、シャッフルビートに乗って、ザクザクとぶった切るような低音域スケールと、泣き節の高音域ソロが交互に表れ、得意技のネック・ベンディング(ヘッドを押し下げて音程を下げるワザ)も繰り出して、ギターキッズたちを熱狂させた。

現在、ハードロック/メタルは、音楽的な傾向で細分化されているが、それは実際のところ、どういう楽曲を演奏するかという個性の違いでしかない。

むしろ、あらゆる要素を包含する本作のような偉大な名盤を繰り返し聴くほうが、さまざまな発見があるのではないだろうか。

(収録曲)
1. アームド・アンド・レディ
2. クライ・フォー・ザ・ネーションズ
3. ヴィクティム・オブ・イリュージョン
4. ビジョー・プレジュレット
5. フィールズ・ライク・ア・グッド・シング
6. イントゥ・ジ・アリーナ
7. ルッキング・アウト・フロム・ノーホエア
8. テイルズ・オブ・ミステリー
9. ロスト・ホライズンズ
10. ジャスト・ア・ラヴァー (1979 デモ) (未発表音源) (ボーナス・トラック)
11. ルッキング・アウト・フロム・ノーホエア (1979 デモ) (未発表音源) (ボーナス・トラック)
12. ゲット・アップ・アンド・ゲット・ダウン (1979 デモ) (未発表音源) (ボーナス・トラック)
13. アフター・ミッドナイト (1979 デモ) (未発表音源) (ボーナス・トラック)
14. ブレイクアウト (1979 デモ) (未発表音源) (ボーナス・トラック)
15. クライ・フォー・ザ・ネーションズ (レディオ・エディット) (ボーナス・トラック)
16. アームド・アンド・レディ (ライヴ) (ボーナス・トラック)
17. イントゥ・ジ・アリーナ (ライヴ) (ボーナス・トラック)
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)