(ジャンル:現代音楽/ブルース)
西欧クラシックの系譜に連なる現代音楽の中では、非常に特異な位置を占めるラ・モンテ・ヤングの音楽は、ほとんど全編ドローン(持続音)でできているが、その中でも非常に人気の高い音源が、2時間に渡ってブルース演奏を繰り広げ、それ自体がドローンとなっているアルバム「Just Stompin’」である。
所収された楽曲名は「LMY-Dorian Blues in G」となっている。いわゆるブルース音階によるブルースではなく、ドリアンスケール(教会旋法のひとつ)を使ったブルースなのだ。
従って、ピアノ、エレクトリック・ギター、エレクトリック・ベースおよびドラムスによる正真正銘ブルース演奏でありながら、大変居心地が悪く、黒人テイストのまったくない、悪夢のようなブルースがこれでもかとばかりに続く。
そして、多くの人が考えていたとおり、同じリズムを延々と反復するミニマル・ミュージックと、持続音の微細な変化を延々流し続けるドローン・ミュージックは、ロックやブルースとの共通項が多いということが明らかになる。
80年代以降は、ロックバンドがそうした現代音楽への接近を図っていたが、現代音楽筋からの取り組みは少ない。
そうした数少ない貴重な試みとして、ぜひ備えておきたい名盤である。
なお、ラ・モンテ・ヤングの音源は、現在極めて入手困難である。プレミアがついて、1枚数千円~数万円という値段で取引されているのが現状だ。
デジタルデータとして希少な音源がアーカイブされて、ダウンロードで購入できるようになっている現在、現代音楽の異才であるラ・モンテ・ヤングの音源のアーカイブを、ぜひとも熱望するところである。
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)