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【名盤クロニクル】舞台で見るかつての現代音楽 ゲルギエフ指揮ストラヴィンスキー「春の祭典」

(画像提供:Amazon.co.jp)

(ジャンル;クラシック)

今では信じられないことだが、かつてはスクリャーヴィンの「法悦の歌」やストラヴィンスキーの「春の祭典」が、前衛音楽として扱われていた時代があった。
特にバレエ音楽の「春の祭典」は、過剰にモダンな振り付けが採用され、「オソロシさ」を増していたが、今ではクラシックの名曲として扱われている。
そんな「春の祭典」の原点である、土俗的な世界を表現したDVDを紹介したい。

バレエ音楽「春の祭典」は、キリスト教伝来前の古代ロシアの祭礼を舞踊にしたものだが、パリ初演のときには、いわゆるフランス流儀の優雅なバレエに慣れきっていた観客が怒り狂って大騒ぎになったことは、伝説となっている。

しかし、そのスキャンダルがさらに増幅したようで、戦後になって舞台上演される「春の祭典」は、完全なモダン・バレエとして演出されることが多かった。

特に映像作品としても名高いモーリス・ベジャール振り付けのものは、極めて猥褻な情感を抱かせるセンセーショナルなものだった。

ここで、オリジナルであった20世紀初頭の天才バレエダンサー、ニジンスキーの演出を再現したのが、ゲルギエフ指揮マリインスキー劇場バレエによる上演である。

モダンな演出に慣れきった目で見ると、極めて新鮮に映り、現代性よりはむしろ土俗性・異教性が強く打ち出されている。

衣装も、古代装束を模したカラフルなもので、視覚的にも美しい。

音楽の衝撃力は、この素朴で美しい踊りと振り付けによって緩和され、一般にクラシック初心者には難解と言われるこの作品が、子どもでも楽しめる舞台となっている。

モダン・バレエ演出の「春の祭典」は、男女の肉体美を強調するダイナミックな振り付けとなっているものが多いので、同じ曲であるにもかかわらず別の作品に聴こえてしまうのが不思議なところである。

なお、さまざまな音源がアーカイブされている現在、「現代音楽のクラシック化」というテーマが浮上している。

現代音楽は、音響的に難解である上に、標題やテーマも教養主義的なものが多い。

小難しくて演奏困難な現代音楽が、「クラシック音楽」として多くの人に親しまれるようになるために、解決すべき課題は多いだろう。

かつて最前線の現代音楽であった「春の祭典」が、古典としてのクラシック音楽になるまで70年ほどかかったが、同様に、素晴らしい作品を厳選して繰り返し上演していけば、やがて愛すべき古典となっていくに違いない。
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)