(ジャンル:ロック)
2010年11月17日(日本時間)に、ザ・ビートルズの音源が晴れてiTunes Storeに登場した。これまでザ・ビートルズを知らなかった人にとっても、気軽に1曲ごとに購入して聴けるようになったことは喜ばしい。
ところで、ザ・ビートルズについて、どれか1枚をセレクトするのは非常難しい。
ただ、オススメ盤として挙げるのであれば、オモチャ箱をひっくり返したような楽しさに満ちている2枚組作品、通称「ホワイトアルバム」を推してみたい。
ロックミュージックの歴史を変革した偉大な名盤というのであれば、ほぼ間違いなく「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」が筆頭に挙げられるのであろうが、極めて濃密に制作されていて、日常的に聴くには息苦しい。
その点、「ホワイトアルバム」は、ザ・ビートルズの看板でやってはいるものの、実質的には4人のメンバーがそれぞれソロ作に近い形で制作した音源を持ち寄って作られている。
そして、そこに込められた音楽の種類も豊富だ。ストレートなロックンロールから、オールドジャズテイストの曲、70年代ハードロックを予告するようなハードエッジな曲からテープコラージュに至るまで、あらゆる要素が詰め込まれている。
「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」などであれば、通常、1曲目からラストナンバーまで曲順を変更して聴くことは邪道とされるが、このアルバムはその日の気分で好きな曲だけピックアップして聴いても差し支えない。
このアルバムを聴いてから、その前後作を聴くといろいろな発見がある。
後年のアート・ロックの先駆けとなった問題作「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」の前衛性。
そしてザ・ビートルズの白鳥の歌ともいえる、事実上のラストアルバム「アビイ・ロード」の、特にアナログB面の崇高なまでの美しさがいっそう光を放つであろう。
なお、「イマドキの若者はビートルズを聴いていない」と嘆く中高年男性を散見するが、少なくとも中高年の彼らが若いときにそうしたように「切実かつ熱心に」聴かれる機会は減っているだろう。
しかし、ビートルズのDNAは着実に現在にまで続いており、もし誰かが新人ミュージシャンの音を聴いて「これは新しい音楽だ」と賞賛したらならば、「これはザ・ビートルズの○○という曲に先例があるよ」と教えてあげるのがよいだろう。
そして、若い世代がその○○という曲を聴いたときに、50年近い時空を超えて、偉大な古典としてのザ・ビートルズの音楽の素晴らしさを知れば、大変喜ばしいことではないだろうか。
(収録曲)
(DISC1)
1. バック・イン・ザ・U.S.S.R.
2. ディア・プルーデンス
3. グラス・オニオン
4. オブ・ラ・ディ、オブ・ラ・ダ
5. ワイルド・ハニー・パイ
6. コンティニューイング・ストーリー・オブ・バンガロウ・ビル
7. ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス
8. ハッピネス・イズ・ア・ウォーム・ガン
9. マーサ・マイ・ディア
10. アイム・ソー・タイアード
11. ブラックバード
12. ピッギーズ
13. ロッキー・ラックーン
14. ドント・パス・ミー・バイ
15. ホワイ・ドント・ウィ・ドゥ・イット・イン・ザ・ロード
16. アイ・ウィル
17. ジュリア
(DISC2)
1. バースデイ
2. ヤー・ブルース
3. マザー・ネイチャーズ・サン
4. エヴリボディーズ・ゴット・サムシング・トゥ・ハイド・エクセプト・ミー・アンド・マイ・モンキー
5. セクシー・セディー
6. ヘルター・スケルター
7. ロング・ロング・ロング
8. レボリューション1
9. ハニー・パイ
10. サボイ・トラッフル
11. クライ・ベイビー・クライ
12. レボリューション9
13. グッド・ナイト
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)