(ジャンル:ブラックミュージック)
アラフィー世代にとっては懐かしさに思わず涙が出そうになる超名盤であろう。なにしろ空前のヒットとなった「宇宙のファンタジー」が収録されているのである。
70年代後半のFMラジオでこの曲が流されない日はなく、ディスコでも毎日のように流されていた。
ところで、この曲で楽しく踊れたかどうかというと、どうも怪しいのである。というのも、このアルバムはディスコではなくファンクの名盤だからである。
「宇宙のファンタジー」は、実は一般的なディスコビートを刻んではいない。
太いリズムは刻まれているのだが、これは当時としては用語がなかったものの、切ないメロディーラインと叙情的なフレーズから考えて、現在ではバラードの一種であるとみなしてよいだろう。
本当にダンサブルなのは、間奏曲を挟んで流れる「銀河の覇者」であるが、こちらのほうは圧倒的なグルーヴがガンガン迫ってくる名曲であるものの、日本人のリズム感覚では、この曲をカッコよく踊るのは不可能だ。
いわゆるディスコミュージックは、黒人音楽のソウルを白人が単純化し、特に4つ打ちのバスドラムを強調して、踊りやすくしたものである。
70年代~80年代のディスコキッズにとって踊りやすかったのは、同時代に流行したノーランズやアラベスクなどの音楽、後年はユーロビート・イタロディスコのほうであったと思われる。
ただし、黒人のほうも自分たちの音楽がヤワにされて白人が売れまくっているのを見て、負けずにシンプル&ダンサブルな曲を発表しだしたことにより、華麗なディスコ黄金時代が訪れる。
そして、このアース・ウィンド&ファイアーの「太陽神」であるが、それまで土臭い演奏が多かったソウルミュージックを極めて洗練されたアレンジで打ち出したことで、ロックファンからも大きな注目を集めた。
多くの人の思い出に残る名盤であるとともに、黒人音楽が大きく注目されるようになった歴史的なアルバムである。
(収録曲)
1. 太陽の戦士
2. 宇宙のファンタジー
3. 市のたつ広場(間奏曲)
4. 銀河の覇者
5. ラヴズ・ホリデー
6. ブラジルの余韻(間奏曲)
7. 聖なる愛の歌
8. マジック・マインド
9. ランニン
10. ブラジルの余韻(間奏曲)
11. ビー・エヴァー・ワンダフル
12. ウッド・ユー・マインド(ラヴズ・ホリデー・デモ・ヴァージョン)
13. ランニン(オリジナル・ハリウッド・ミックス)
14. ブラジルの余韻(ライヴ・ヴァージョン)
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)