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(ジャンル:ロック)
1970年代はロックミュージックにとって激動の10年間であった。
産業化し、巨大化したロックの行き詰まりにより、パンクムーブメントとその後のさまざまな発展形が登場した。
その一つが、ネオロカビリーと呼ばれたストレイ・キャッツのデビュー作「涙のラナウェイ・ボーイ」である。
本作を歴史的に語ることもできるのだが、むしろロカビリースタイルの音楽に込められたさまざまな音楽性を聴き取るとともに、ギタリストであるブライアン・セッツァーの卓越したスタイリストぶりが堪能できるアルバムであると言えよう。
シンプルなロックン・ロールのように聴こえるが、そこにはカントリー、ビ・バップ、ブルース、そしてパンク的スリーコード・リフからレゲエ的なフレーズまで多彩に表現しつくすギターの魅力は素晴らしい。
大音量でディストーションをかけ、延々と続くギターソロを聴かせるワンパターンのギタープレイではない、ギターの魅力を余すところなく伝えている。
そして、このギターの独特のまろやかな音色は、同時代にデビューしたダイアー・ストレイツのギタリスト、マーク・ノップラーにも通じるものがある。ノンエフェクターの音色に近いサウンドが、逆に新鮮なのである。
また、彼らは基本的にアコースティックバンドであることも奏功している。ベースもアップライトであり、ギターもグレッチのアコースティックモデルである。
こうした音楽性が、単なるロカビリーのリバイバルではない、オリジナリティあふれるサウンドを生み出したと言えるだろう。
ネオロカビリーは、現在ではロックの一様式となっているので、時代に関係なく、いつでも楽しいのがストレイ・キャッツである。
(収録曲)
1. 涙のラナウェイ・ボーイ
2. 悩殺ストッキング
3. ユバンギ・ストンプ
4. ジニー・ジニー・ジニー
5. 嵐の中の大使館
6. ロック・タウンは恋の街
7. ランブル・イン・ブライトン
8. 気取りやキャット
9. クロール・アップ・アンド・ダイ
10. ダブル・トーキン・ベイビー
11. マイ・ワン・ディザイアー
12. ワイルド・サクソフォン
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)