(ジャンル:クラシック)
テクノポップのルーツのひとつであるクラフトワークの作品を、弦楽四重奏で演奏した面白いアルバムである。
現代の芸術音楽はロックやジャズとの交流がもはや当たり前になっているが、ファンのほうもクラシックとポップミュージックの両方が好きという人が当たり前になっており、豊かな音楽世界が広がっていると言えよう。
テクノポップの音楽的スタイルを特徴づけるものとして、シンセサイザーとシーケンサーによる自動反復ビートが挙げられる。
これは伝統的なクラシック音楽で言う「オスティナート」、現代音楽で言う「ミニマル・ミュージック」にも対応するため、ロックミュージックの中でもクラシック音楽フォーマットに馴染みやすいものである。
バラネスク・カルテットは、このテクノ独特のポキポキした反復リズムを、あるときはピチカートで、またあるときはスタッカートで、時にはチェロのボディを手で叩いたりして表現している。
弦楽四重奏とロックやジャズとの出会いは、かつてクロノス・カルテットがセロニアス・モンクやビル・エヴァンスそしてジミ・ヘンドリックスの作品を演奏して先鞭を着けたが、バラネスク・カルテットは、微妙に違う路線を狙っているようだ。
さて、この弦楽四重奏によるクラフトワークだが、ファンにとっては「どうして、あの曲をやってくれなかったのか?」とか「あの曲ならもっと弦楽四重奏にマッチしたのに」といった感想を持つかもしれない。
その辺の「もどかしさ」も含めて楽しめる作品集となっている。
なお、バラネスク・カルテットは同じくテクノの大御所YMOのカバーもやっているので、興味を持たれた人は両方聴いてみるのがよいであろう。
(収録曲)
1. Robots
2. Model
3. Autobahn
4. Computer Love
5. Pocket Calculator
6. Possessed
7. Want Me
8. No Time Before Time
9. Hanging Upside Down
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)