writer : techinsight

【名盤クロニクル】早すぎた力作名盤 ELP「Works Vol1、2」

(画像提供:Amazon.co.jp)

(ジャンル:ロック)

日本の現代作曲家、吉松隆が武闘派プログレッシブ・ロックバンドの雄、エマーソン・レイク&パーマー(ELP)の1971年の作品「タルカス」をオーケストラ編曲して初演し、好評を博した。
ここで改めて取り上げるべきELPの名盤がある。オーケストラの導入によって発表当時大変な賛否両論を巻き起こした1977年のアルバム「ELP四部作」と続編の「作品第2番」(原題はそれぞれ「Works Vol1」と「Works Vol2」)である。

ELPはもともと、バルトークやプロコフィエフなどのクラシックに影響を受けて、それらをロックとして表現してきたバンドだっただけに、オーケストラの導入はごく自然な流れであった。

しかし、オーケストラとの共演だけであれば、もっと以前に他の幾つものバンドやミュージシャンが実験的に行っている。

Worksの魅力は、クラシック、ジャズ、ブラスロック、ラグタイム、フォーク、ブルースからシャンソン風の曲まで、多彩な音楽性を示したことによる。

しかし、名盤として正しく評価されるには、発表された時代が早すぎた感があった。

当時はパンクムーブメントの勃興期であり、進取の気鋭に富んだロックファンはそれまでの「古い」ロックを見捨て、古くからのファンは時代の変化についていけずに、右往左往していた状況である。

また、当時はクラシック音楽界がロックミュージックを軽蔑する傾向が強く、両者の良い交流が行われるには、まだしばらくの時間が必要だった。

その後、クロノス・カルテットがジミ・ヘンドリックスの曲を取り上げたり、ビートルズナンバーがクラシック演奏家のレパートリーに加えられたり(例:武満徹の「ギターのための12の歌」やソプラノ歌手のキャシー・バーベリアンのレパートリーなど)、近年では作曲家 野平一郎がイングウェイ・マルムスティーンのためにエレクトリック・ギター協奏曲を書くなど、クラシック界の閉鎖的な傾向はあまりなくなってきている。

現在、先入観なしでWorksシリーズ(Vol1、Vol2、およびライブ)を聴けば、オーケストラとエレクトリック楽器がよく調和した傑作として響くであろう。

というのも、ELP以前にクラシックとロックの融合を行った他ミュージシャンの作品には、消化不良気味の作品のほうが多く、クラシック音楽を聴きこんだリスナーの耳には「恥ずかしくて聴いていられない」というものがあるからだ。

ELPのWorksシリーズは、クロスジャンルな音楽の早すぎた成功例として、改めて再評価されるべき傑作であると言えるだろう。

(収録曲)

○ELP四部作(Works Vol1)

ディスク:1
1. ピアノ協奏曲第1番
2. 今夜は愛の光につつまれて
3. セ・ラ・ヴィ
4. 願わくは、み名の尊まれんことを
5. ノーバディ・ラヴズ・ユー・ライク・アイ・ドゥ
6. クローサー・トゥ・ビリーヴィング
ディスク:2
1. 邪教の神、そして悪の精の踊り (スキタイ組曲 作品20 第2曲)
2. L.A.ナイツ
3. ニューオーリンズ
4. 2声のインヴェンション、ニ短調
5. フード・フォー・ユア・ソウル
6. タンク
7. 庶民のファンファーレ
8. 海賊
9. タンク (ライヴ・インディアナ 24/1/1978) (ボーナス・トラック)
10. 邪教の神、そして悪の精の踊り (スキタイ組曲 作品20 第2曲) (ライヴ・インディアナ 24/1/1978) (ボーナス・トラック)
11. ナットロッカー (ライヴ・インディアナ 24/1/1978) (ボーナス・トラック)

○作品第2番(Works Vol2)

1. 孤独なタイガー
2. あなたのバレンタイン
3. ブルフロッグ
4. 恐怖の頭脳改革
5. バレルハウス・シェイクダウン
6. 君を見つめて
7. ソー・ファー・トゥ・フォール
8. メイプル・リーフ・ラグ
9. 夢みるクリスマス
10. そっと閉じて
11. ホンキー・トンク・トレイン・ブルース
12. 迷える旅人
13. ボ・ディドリー (ボーナス・トラック)
14. ハンバッグ (ボーナス・トラック)
15. ザ・パンチャ・スイート (ボーナス・トラック)
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)