スーパーや展示会場において、どのようなレイアウトを設計するかは非常に難しい問題だ。
これまでの経験則によるレイアウトの基本はすでに熟知されているだろうが、どれも同じような設計になってしまっては、個性や独自性が表現できない。
そして、もしかするとさらに効果的に人の流れを把握したレイアウトが存在するかもしれない。そうした人の流れ、行動や関心度を測定できる技術をNECが開発した。
NECの開発した行動センシング技術では、センサの再調整が不要で長期間の安定動作が可能な、参照型無線LAN測位方式を採用している。
本方式では、人の位置を3mの分解能(正解率:86%以上)で高精度に検出可能。人や物の動きなどの影響で、測定開始から数日または数十分で大きく性能が低下する場合があった従来の無線LANによる測位方式に比べ、本方式では、事前に収集した電波強度(基準データ)と、据置型多機能センサで常時収集する電波強度(参照用データ)とを比較し、補正しながら位置を算出することで、安定した高精度測位を実現した。
携帯電話に内蔵された加速度センサを用いて、場所や物に対する関心の強さを推定する行動ベース関心度推定方式を開発。建物内へセンサを多数設置したり、人体へのセンサ装着が必要だった従来方式に比べ、本方式では、すでに多くの携帯電話に搭載されている加速度センサを利用している。
従来の「商品を触る」など直接的な動作で識別していた関心度に比べ、加速度センサの出力データに基づいて歩行や停止などの動作を識別し、その発生回数や持続時間から関心度を算出することができるため、導入の手間を大幅に削減している。
据置型多機能センサに内蔵された人感センサを用いて、5m四方のエリアに滞在している人の数を誤差1人以下で推定する方式を開発。従来のカメラで撮影した画像を処理する方式等に比べ、本方式では、センサの反応回数や反応持続時間を統計処理した値からエリア内に存在する人の数を類推する方法により、小型・安価な人感センサを用いながら、高精度での滞在人数推定を実現した。
本成果の一部は、平成21年度にNECが参画していた経済産業省「ITとサービスの融合による新市場創出促進事業(e空間実証事業)」の一環として研究開発を行ったものである。
今回開発した技術ならびに実証内容は、2010年9月7日から9日まで九州大学伊都キャンパスで開催される「第9回情報科学技術フォーラム(FIT2010)」で、7日に発表が予定されている。
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)