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(ジャンル:ジャズ)
ジャズと現代音楽(いわゆる20世紀クラシック)は、1960年代にお互いに影響を及ぼしていたが、ミュージシャンよりもむしろファン層において両方を愛好する人がけっこういる。
今回は、特に現代音楽ファンやロックファンにウケの良いジャズ名盤として、エリック・ドルフィーのブルーノート名盤「アウト・トゥ・ランチ」を紹介したい。
ピアノ、ベース、ドラムス、ヴィブラフォン、トランペットそしてドルフィーのアルトサックス/バスクラリネット/フルートによって演奏される、独特の「ねじれ感」は、ジャズファンだけではなく、現代音楽ファンやアート・ロックファンに愛好者が多い。
たとえば、フランク・ザッパの「Roxy&Elsewhere」あたりの音楽を好む人や、ピエール・ブーレーズの傑作室内楽「ル・マルトー・サン・メートル」の感覚に近いものがあるだろう。
モダンジャズの王道からすれば、完全に「アウト」な感覚なのであるが、セシル・テイラーやアルバート・アイラーほどにイってしまっておらず、同時代のファンキブームやボサノヴァブームには迎合せず、孤高の位置にあるアルバムである。
1曲目「ハット・アンド・ベアード」における、ヴィブラフォンの効果的な使い方や、ドラムスとバスクラリネットのフレーズが裏返って進むあたりの前衛性は、ちょっと聴くと難解かもしれないが、あっけらかんとしたポップさも垣間見える。
2曲目「サムシング・スイート・サムシング・テンダー」は、バスクラリネットとベースのアルコ奏法のデュオが、美と醜悪の境をうごめくように流れる。
3曲目「ガゼロニ」は、フルートの跳躍音程が印象的な作品。
4曲目のタイトルチューン「アウト・トゥ・ランチ」も風変わりな跳躍旋律が印象的な演奏。
前衛性とポップさが同居した不思議な現代ジャズ室内楽として楽しめる名作である。
(収録曲)
1. ハット・アンド・ベアード
2. サムシング・スイート・サムシング・テンダー
3. ガゼロニ
4. アウト・トゥ・ランチ
5. ストレート・アップ・アンド・ダウン
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)