writer : techinsight

【名盤クロニクル】ニッポン・フュージョンの金字塔 カシオペア「THUNDER LIVE」


(画像提供:Amazon.co.jp)

(ジャンル:フュージョン)

1970年代には、ジャズとロックが融合した独自の音楽をクロスオーバーまたはフュージョンと呼んでいた。1980年代以降はソフト&ポップ化が進み、現在でいうところのスムースジャズという分野に落ち着いていったが、初期フュージョンの圧倒的なパワーを示す代表的な名盤が、現在も活動中のカシオペアの「THUNDER LIVE」である。

従来のロックまたはジャズは、メンバーのソロリレーで楽器の腕前を披露するタイプの音楽であったが、この当時のカシオペアは、およそ常人には考えつかないような複雑なフレーズをユニゾンで、しかも余裕でキメまくるという、信じがたい演奏テクニックを備えていた。

特に1曲目の「スペース・ロード」中間部で4人が極めてテクニカルなフレーズを一糸乱れぬアンサンブルで披露した後、野呂一生の超絶早弾きソロに突入していくシーンは、驚きや感動を通り越して、全身が硬直してしまう凄まじさだ。

実際に、初期の彼らのライブのオーディエンスはほとんどがバンドキッズで、最前列の客はかぶりつき状態で、彼ら(特にギターとベース)のフィンガリングをコピーしようとしていた。

また、彼らの演奏をいっそう凄まじいものにしているのが、ドラムスの神保彰である。そのテクニックとドライブ感は、凡百のドラマーには到達不能な世界であり、現在ソロドラムだけでライブを行える日本人ドラマーは彼ぐらいのものであろう。

同時代のフュージョンミュージシャンには、高中正義、T-SQUARE、松岡直也などがいたが、カシオペアに比べると、良い意味でユルいのが逆に魅力となっていた。

フュージョンは、どちらかといえば「夏の音楽」になる。
今年の猛暑、かつてのギターキッズもフュージョンファンも、昔を思い出して古き良きフュージョンに浸ってみてはいかがだろうか。

(収録曲)
1. スペース・ロード
2. セイリング・アローン
3. アイム・ソーリー
4. ハヴ・ア・ナイス・ドリーム
5. ブラック・ジョーク
6. ミッドナイト・ランデブー
(TechinsightJapan編集部 真田 裕一)