writer : techinsight

【名盤クロニクル】格調高い夏音楽 アストラッド・ジルベルト「ルック・トゥ・ザ・レインボウ」

(画像提供:Amazon.co.jp)

(ジャンル:ボサノヴァ)

昔の夏音楽と言えば「ハワイアン」だが、イマドキの夏音楽(洋楽限定)は「ボサノヴァ」と「レゲエ」である。
今回は、ボサノヴァの単調さを排して、ギル・エヴァンスのモダンなオーケストラアレンジで格調高い「夏サウンド」を聴かせる、アストラッド・ジルベルトの「ルック・トゥ・ザ・レインボウ」を紹介する。

ボサノヴァとジャズの関係は、一種のピンポンに例えられる。それまでサンバの祭典音楽かブラジル艶歌とでもいうべき重い大衆音楽しかなかったブラジルの若手ミュージシャンがウェストコーストジャズのフィーリングを取り込んで、発明した都会的なサンバである。

それゆえに、新傾向(Bossa Nova)と呼ばれたのである。それが評判となりアメリカ公演を行うや否や、ジャズミュージシャンが多大な影響を受け、猫も杓子もボサノヴァ風ジャズを演奏するようになる。

そして、ボサノヴァの魅力は、ギターの複雑なリズムと軽くソフトなヴォーカルが不思議な調和を醸すところにあるのだが、「ルック・トゥ・ザ・レインボウ」は、ともすればワンパターンになりがちなボサノヴァに都会的でモダンなギル・エヴァンスのオーケストラを加えて、非常に洗練されたボサノヴァアルバムになった。

しかもレパートリーに、「ワンス・アポン・ア・サマータイム」や「シェルブールの雨傘」などのミッシェル・ルグランの名曲を取り入れて変化を付けると同時に、ギルのアレンジも1曲ごとに、陰影のあるホーンアンサンブルや、ストレートなボッサリズム、そしてオルガンを取り入れたアレンジなど、素晴らしいの一言に尽きる。

とかく「イパネマの娘」ばかりクローズアップされるアストラッドであるが、アレンジャーと一体になった格調高いモダンボッサの世界に身を浸してみてはどうだろうか。

(収録曲)

1. ビリンバウ
2. おもいでの夏
3. フェリシダージ
4. シェルブールの雨傘::アイ・ウィル・ウェイト・フォー・ユー
5. フレヴォ
6. 静かなマリア
7. ルック・トゥ・ザ・レインボウ
8. ビン・ボン
9. あこがれの地
10. 寂しい人生
11. 彼女はカリオカ
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)