writer : techinsight

【名盤クロニクル】ギターとフルートの2大名曲収録 高木綾子「海へ」

(画像提供:Amazon.co.jp)

(ジャンル:クラシック)

フルートとハープの二重奏ならば、フランス音楽を中心にたくさんの作品が書かれているが、ギターとフルートの二重奏というのは少なかった。
しかし、現代にいたって、この編成による名曲が二曲誕生した。武満徹の「海へ」とアストル・ピアソラの「タンゴの歴史」である。
この2大名曲を一度に収録したお得なアルバムが「海へ」。女性フルート奏者の高木綾子とギタリスト福田進一による演奏である。

武満徹は、フランス音楽からの影響が大きいので、フルートのための作品をいくつか書いている。遺作となった「エア」は無伴奏フルートのための作品、初期の作品「マスク 2本のフルートのための」を始め、室内楽でも多くフルートを使っている。

その武満徹円熟期の作品が、アルトフルートとギターのための「海へ」だ。3部構成になる静謐な音楽で、目を閉じて聴いていると、海辺の小川がひそやかに海に流れ入るような情景が印象的だ。

高木綾子のフルートの音色も、海辺のそよ風のように美しい。

一方、アストル・ピアソラの「タンゴの歴史」は、このままストリートライブで演奏してもウケそうな非常に親しみやすい明快なメロディを持つ名作だ。

ピアソラの音楽は、多くバンドネオンを伴ったタンゴ編成による、ほの暗く時として非常に激しい音楽だが、この「タンゴの歴史」は例外的に、小学生でもすぐに親しめる音楽となっている。
こちらは4部構成の組曲となっており、20世紀初頭から現在までのタンゴの歴史が綴られるが、クラシックではあまり味わえない南米の空気が存分に堪能できる。

海外ではこの2つの作品を主要レパートリーとするギターとフルートのデュオユニットも結成されており、これからもファミリーコンサートなどで演奏され続けるだろう。

子どもの情操教育にも最適かもしれない。子どもというのは大人が親しんでもいないクラシックを無理に聴かせても、嫌がって聴かないものなのだ。まずは親が楽しめる作品集ということで、大いに推奨したいところである。

(収録曲)
1. ブエノスアイレスの雲(プホール)
2. タンゴの歴史(ピアソラ)
3. 子守歌とセレナード(ボザ)
4. イストワール(イベール)
5. 間奏曲(イベール)
6. 海へ(武満徹)
7. ハバネラ形式の小品(ラベル)
8. 古き良き時代のカンドンベ(プホール)
9. アイルランドの女(ボーリング)
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)