writer : techinsight

【名盤クロニクル】平原綾香の先輩 アニー・ハズラム「スティル・ライフ」

(画像提供:Amazon.co.jp)

(ジャンル:ロック)

平原綾香が、クラシックカバーアルバムの第2集をリリースした。
大ヒット曲「ジュピター」の二匹目のドジョウを狙おうとレコード会社が熱心なのはご苦労様だが、なんでもソツなくこなして、自分の個性にしてしまう平原綾香はやはり凄いシンガーである。

さて、クラシックのカバーならば、洋楽にもずいぶん存在するが、アルバム丸ごとクラシックのカバーというのは少ない。
そんな中で、今回はイギリスのシンガー、アニー・ハズラムのクラシックカバーアルバム「スティル・ライフ」を紹介したい。

アニー・ハズラムは、1970年代に活躍したプログレッシブロックバンド「ルネッサンス」でヴォーカルを担当していた女性シンガーである。
当時、女性のシンガーが珍しかったこともあって、「天使の歌声」と称揚された。

80年代以降に登場したエンヤやサラ・ブライトマン、ヘイリーなどとも共通する透明な歌声が特徴だ。80年代以降、数枚のソロアルバムを発表しているが、いわゆるポップケルト系に近いサウンドで、変わらぬ透明な歌声を披露していた。

そんなアニーが1996年に発表した全編クラシックのカバー作品集が、本作である。原曲のムードを壊さずに、ほどよく導入されたオーケストラや合唱がアルバム全体の品格を高めている。

原曲の半分は誰でも知っている名曲だが、1曲目「Forever Bound」(チャイコフスキー交響曲第5番第2楽章)や10曲目「Skaila」(ディーリアス「ラ・カリンダ」)などは、かなり意表をつく選曲で、平原綾香の音楽スタッフの皆さんにも参考になるのではないだろうか。
また、フォーレの作品が2曲取り上げられているが、こちらも平原綾香のほうは未開拓分野なので、できたらチャレンジしてほしいと願うところだ。

なお、アニー・ハズラムの歌声を聴いて気に入った人は、バンド「ルネッサンス」の名作群にもぜひ触れて欲しいところである。
70年代サウンドなので、洗練されていない部分は多いが、英国の格調高いサウンドが感動的である。

余談であるが、クラシック曲のアレンジを取り上げるポピュラーシンガーがいる一方で、昔はドイツリートやオペラ・アリアばかりを歌っていたクラシック専門の歌手がどんどんポピュラー曲を取り上げているのも面白い現象である。

ジャンルの垣根を越えて、良い音楽はどんどん取り上げて欲しいものである。

(収録曲)
1 Forever Bound(チャイコフスキー交響曲第5番第2楽章)
2 Still Life(バッハ G線上のアリア)
3 One Day(フォーレ 「ドリー」より「子守歌」)
4 Ave Verum(モーツァルト「アヴェ・ヴェルム・コルプス」)
5 Shine(サティ「ジムノペディー」)
6 Careless Love(ショパン「別れの曲」)
7 Glitter And Dust(チャイコフスキー「白鳥の湖」から「情景」)
8 Day You Strayed(フォーレ「パヴァーヌ」)
9 Save Us All(アルビノーニ「アダージョ」)
10 Skaila(ディーリアス「ラ・カリンダ」)
11 Bitter Sweet(サン・サーンス「白鳥」)
12 Chains and Threads(ワーグナー「タンホイザー」序曲より)
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)