writer : techinsight

【名盤クロニクル】音そのものに向き合う ベリオ「セクエンツァ」

(画像提供:Amazon.co.jp)

(ジャンル:クラシック)

クラシック音楽が、なかなか一般ウケしない理由の一つに「意味の不在」がある。
ベートーヴェンの「田園」や「合唱」、ベルリオーズの「幻想交響曲」などのような「意味の権化」のような作品はおおむね人気だが、「交響曲第4番ニ長調」などというそっけないタイトルだと多くの人は聴く気が失せるようだ。
しかし、音楽の醍醐味は、必死で音の意味を追い求めるよりも、音の連なりそのものを楽しむことにある。聴き手のイマジネーションを限定しないからである。今回はそんな音楽を紹介したい。現代作曲家ルチアーノ・ベリオの「セクエンツァ」である。

ベリオのセクエンツァは、さまざまな楽器の無伴奏ソロのために書かれた作品で、1950年代から作曲家逝去の2000年代まで半世紀にわたって書かれたシリーズ曲である。

とかく難解とされる現代音楽であるが、この作品集もその例に漏れず決して聴きやすい作品とは言えない。むしろ、最初は耳障りの悪い、わけのわからない音楽として聴こえることであろう。

しかし、何度か繰り返して聴くうちに、音の連なりの面白さがわかってくる。ヴァイオリンのための「セクエンツァVIII」などは、とても一人で弾いているとは思えない、大胆な音の強弱や細かいパッセージの連なりが面白い作品だ。

トランペットのための「セクエンツァX」は、トランペットをピアノの内部に向けて吹き、ピアノ線との共鳴を利用したユニークな音響だ。これも、頻繁に変わる音の強弱や音色が楽しめる。

もちろん、どの曲も演奏者の超絶技巧が求められる。超絶技巧そのものを楽しむのもよし、一人で演奏しているのに数名で演奏しているように聴こえる効果を楽しむのもよし。
そして耳になじんできたら、時折用いられる特殊奏法の面白さを追っていくのもよし。
音に情景や思想などの「意味」を求めない純粋な音楽の楽しみ方が凝縮したような3枚組CDである。

現代音楽の入門としても推奨したい名盤である。

(20/21 – Berio: Sequenzas / Ensemble InterContemporain 収録曲)
ディスク:1
1. Sequenze: Sequenza I for flute
2. Sequenze: Sequenza II for harp
3. Sequenze: Sequenza III for woman’s voice
4. Sequenze: Sequenza IV for piano
5. Sequenze: Sequenza V for trombone
6. Sequenze: Sequenza VI for viola
ディスク:2
1. Sequenze: Sequenza VII for oboe
2. Sequenze: Sequenza VIII for violin
3. Sequenze: Sequenza IXa for clarinet
4. Sequenze: Sequenza X for trumpet in C and piano resonance
ディスク:3
1. Sequenze: Sequenza XI for guitar
2. Sequenze: Sequenza XII for bassoon
3. Sequenze: Sequenza XIII for accordion
4. Sequenze: Sequenza IXb for alto saxophone
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)