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(ジャンル:ジャズ)
ジャズにおけるあらゆるピアノソロアルバムの中でも最高峰に位置する名盤と言えるだろう。内容が素晴らしいだけではなく、多くのリスナーに愛された。
日本における愛されぶりに関しては、マル・ウォルドロンの「オール・アローン」というアルバムも有名だ。アローン繋がりで愛されているのも奇しいことである。「ソロ」ではなく「アローン」であることが重要のようだ。
なぜソロではなく「アローン」であることが重要なのかと言えば、ピアノという楽器はもともとソロで弾くのがごく当たり前になっている楽器であるからだ。
クラシックの世界でもソナタと言えば、他の楽器は通常ピアノ伴奏付きであるのに対して、ピアノソナタだけはピアノソロである。
アローンという言葉は、自己の探求とか内面への旅路といった趣がある。ジャズのスタンダードをソロで弾いてみましたというような安易な演奏ではなく、求道にも似た姿勢が日本人好みでもあるのだが、そうした事情を差し置いても、ビルのこのアルバムは素晴らしい。
どの曲も素晴らしい演奏だが、1曲目のモダンなポピュラーソング「ヒアズ・ザット・レイニー・デイ」の深遠さは、別格である。ジャズではスタンダードの仲間入りはしているものの、演奏機会は少ない。原曲のムードを解体せずに、美を表現するのが難しい曲なのだ。
そして、LP時代はB面全部を占めていた「ネヴァー・レット・ミー・ゴー」は、まさしくこのアルバムのハイライトである。ひたすらピアノに向き合いながら、自分の内面を掘り下げていく。そして全体に横溢するメランコリーなムードはビル・エヴァンス独自の世界である。
近年のジャズ入門盤と言えば、ビル・エヴァンスの優雅な「ワルツ・フォー・デビイ」が定番になっているようだが、ビルの真骨頂は独自の和声とメランコリズムにあると言える。そうしたビルの入門からもう一歩進んだ作品として、このアルバムは大いに推奨されよう。
(収録曲)
1. ヒアズ・ザット・レイニー・デイ
2. ア・タイム・フォー・ラヴ
3. ミッドナイト・ムード
4. オン・ア・クリア・デイ
5. ネヴァー・レット・ミー・ゴー
6. オール・ザ・シングズ・ユー・アー~ミッドナイト・ムード
7. ア・タイム・フォー・ラヴ(別テイク)
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)