1990年代にエンド・ユーザー・コンピューティング(EUC)という概念が提唱されたことがある。表計算ソフトの高機能化に伴って、かつてメインフレームやオフコンで処理していた統計作業を、実務ユーザー自らシステムを作って処理できるというのが売りであった。
これによって多くのエクセル達人が輩出したが、EUCには負の側面もある。その代表が「ドキュメント(仕様書)がない、どういう仕組みで動いているのか誰も分からないけど、ちゃんと実務に使えている」という怪しいエクセル資産の山である。
ちゃんと実務に使えているときには誰も困らないのだが、何かの理由で業務手順が変わったり、新機能が必要になったときに仕様書がないと非常に困る。
もはやどの関数がどのシートのどのセルに対応していて、どういうロジックで計算処理をしているのか分からないので、手を入れられないのである。作成者はすでに退社していて確認することもできない。
そしてマクロを埋め込んである状態で、エクセルのバージョンアップをすると新バージョンではマクロが正常に動作しないことも多く、作り直しが必要になる。しかし、その時点で仕様を理解して改良できる人間がいないと、バージョンアップもできないといった現象も起きがちだ。
こういう状況を、システムインテグレーターに相談すると、「エクセル資産の仕様解析を行って、データベースシステムを導入し、ERPパッケージ(統合業務パッケージ)のカスタマイズで対応しましょう」などと言われて、高額な見積もりを見せられることになる。
しかし、エンドユーザーはあくまでもエクセルで仕事をしたいのだ。業務担当者が作ったエクセル資産は非常に良く実務に即して作られており、できることなら安い経費で統合管理を行いながら、使い続けたい。
そんなニーズにマッチするのが、北海道オフィスシステムの提案する「エクセルレガシーソリューション」だ。
まず、取り組むべきは「エクセルを捨てる」ことでも「個別のエクセルシステムの改善でもなく、 『エクセル管理基盤を構築する』 ことである。
仕組みを簡単に説明すると、バックにXMLデータベースシステムを置き、テンプレート化されたエクセルファイルをフロントエンドとしてデータを取り出して集計、加工、統計等の処理が行えるというものだ。ミドルウェアにはPluxieと呼ばれるエクセル等と親和性の高い変換ソフトを使用する。
これで、今まで使い慣れたエクセルファイルを使って、きちんと統制の取れた作業が実現できるという仕組みだ。
現在、エンタープライズ分野では「レガシーマイグレーション」と呼ばれる作業が進行している。汎用機で稼働していたシステムを変換ツールを用いてWindowsやUNIXで動作するようにすることだが、ここでも「ノウハウの詰まったレガシーシステム」の再開発は行わない。レガシー(旧式)であるということは、全面悪ではない。それは貴重な業務資産の集積なのである。
ある意味で、アマチュアの行ったレガシーマイグレーションであるEUCも年月とともに、それ自体がレガシーになりつつある。エクセルレガシーソリューションは、そこに詰め込まれた業務ノウハウを生かしながら、統制の取れた継続使用を図る有望なソリューションである。
(TechinsightJapan編集部 真田 裕一)