writer : techinsight

【名盤クロニクル】暗黒イマジン パーフェクトサークル「eMOTIVe」

(画像提供:Amazon.co.jp)

(ジャンル:ロック)

メタル系の音楽については、さまざまに細分化されて呼ばれており、ゴシックメタル、デスメタル、スラッシュメタル、プログレメタルなど数十種類に分類されている。
音楽の傾向を表示すること自体は悪いことではないが、あまりに細かいと違いが分からず、ラベリングの意味も不明確になるので、おおざっぱに「メタル」にしておくのが一番良いだろう。あとはバンドの個性に還元した方が良い。

さて、今回紹介するトゥールのメイナード・キーナン率いるア・パーフェクト・サークルの3rdアルバム「eMOTIVe」は、一般に平和の歌とされているロックの名曲を、大変な暗黒サウンドにアレンジカバーした珍盤である。

ア・パーフェクト・サークルは、基本的にメタルまたはオルタナティブに分類されるバンドであるが、単純な暴力性やファッションとしての悪魔崇拝のようなクリシェに陥らず、極端に冷めた知性とモダンなサウンドを聴かせるグループだ。

このアルバムで話題になったのは、ジョン・レノンの永遠の名曲「イマジン」の暗黒カバーである。平和運動をやっている人たちの聖歌になっていると言っても良いだろう。

この「神聖不可侵」な名曲を、陰鬱で沈み込むような、まるで地獄の底から響いてくるようなサウンドで、不安にゆらめくように歌っている。そのほかマーヴィン・ゲイの「ホワッツ・ゴーイン・オン」やディーヴォの「フリーダム・オブ・チョイス」などが並んでいる。

これらのサウンドを聴いていると、ロックが平和の歌になったり、反体制の歌になったり、環境保護や人類愛の歌になってきたにもかかわらず、世界は何も変わっていないことを実感する。それで良いのである。

未だに音楽にさまざまなメッセージを込めて何事かを訴えようとするミュージシャンは多いが、音楽そのものにそのパワーがなければ、いくらメッセージを叫んでも空念仏で終わるだろう。

シニカルな視点と、独創的な表現に満ちた、モダンな暗黒カバー集である。

(収録曲)
1. Annihilation
2. Imagine
3. Peace Love and Understanding
4. What’s Going On
5. Passive
6. Gimmie Gimmie Gimmie
7. People are People
8. Freedom of Choice
9. Let’s Have A War
10. Counting Bodies Like Sheep to the Rhythm of the War Drum
11. When the Levee Breaks
12. Fiddle and the Drum
(TechinsightJapan編集部 真田 裕一)