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【アリ?ナシ?】多摩ニュータウン初の建て替え決定。入居中の高齢者にとってはプラス?マイナス?

大部分の入居者が高齢者だが、建て替えは彼らにとってプラスか、マイナスか。全国有数のニュータウンとして知られる多摩ニュータウン(東京・多摩市、八王子市、稲城市など)で、初期に入居が始まった諏訪二丁目団地(多摩市)が老朽化のため全棟を取り壊し、高層マンションとして建て替えることがわかった。

これは28日の臨時住民総会において決まったもの。多摩ニュータウンの分譲集合住宅としては初の建て替えとなる。

多摩ニュータウンは高度経済成長により人口が急増した首都圏住民の住居確保のため1965年に都市計画が決定されたもので、現在は3鉄道路線が乗り入れ、20万人の人口を抱える全国最大規模のニュータウンだ。

今回建て替えが決まったのは、1971年に多摩ニュータウンとして最初に入居が始まった諏訪二丁目住宅だ。現在は640戸を有するが、建物が老朽化していることと、多摩ニュータウン計画当初の住宅は間取りの狭い団地が多かったために、入居者は減少の一途をたどっている。また、入居者の多くは高齢化が進んでおり、地域コミュニティの崩壊や独居老人の孤独死などの問題も指摘されていた。

28日に開催された臨時住民総会では、老朽化した全23棟を取り壊し、高層マンション7棟に一括して建て替える決議に9割の賛成票が投じられたため、この案が可決した。各報道によると建て替え案は現在の5階建て23棟を11階~14階建ての7棟・1235戸にするということで、国内最大級の建て替えになるという。来年度着工、13年秋ごろ完成の予定だ。

高度経済成長期に建てられた集合住宅は、耐震強度の不足や水道管・ガス管などの劣化が問題となっているほか、エレベーターが設置されていなかったり駐車場の数が少なかったりと、高齢者にとっては不都合な点が多く、現在各地で建て替えに向けた話し合いが進められている。

一方、建て替えをするということは、その工事期間中は他の場所自費で転居するということでもある。今回の建て替えに際しては居住者の多くを占める高齢者の転居先についても、問題を指摘する声が挙がっている。諏訪二丁目住宅と同様に建て替えを議論している都内の集合住宅では「年寄りにとって引っ越しは容易ではない」「自分の人生は残り僅かなのだから、今のままの生活を楽しみたい」といった声も聞かれた。

とは言え、老朽化や高齢化すなわち居住者の減少を見過ごしていては、ゴーストタウンになってしまう。今回の諏訪二丁目団地の建て替え計画は、高齢化や入居者離れが進むニュータウンにおける問題解決の一手として、大きな注目を集めそうだ。
(TechinsightJapan編集部 鈴木亮介)