writer : techinsight

【名盤クロニクル】チョン・キョンファ(Vl)「ヴィヴァルディ 四季」

(画像提供:Amazon.co.jp)

(ジャンル:クラシック/バロック音楽)
「クラシックファンやジャズファンは、どうして同じ曲なのに演奏者が違うとかバージョンが違うとかで喜んでいるの?」と思っている音楽ファンは多いことであろう。
これに対する回答として、おそらくこれを知らない人はいないであろう名曲「ヴィヴァルディの四季」がひとつの答えになるであろう。

この作品は、楽譜にあまり細かな演奏指示が書かれていないので、演奏者の考えや個性で色々な雰囲気が出てしまうのだ。
たとえば、「やけにゴツゴツした四季だなぁ」と思ったら、ドイツのオーケストラだったり、「やけに変な音色だなぁ」と思ったら、古楽器(17世紀に使われていた今とは微妙に違う楽器)による演奏だったり、本当に演奏によって様々な「四季」が楽しめる。

いずれにしても、この作品はかしこまって聴く曲ではなく、自宅でカフェタイムなどしながら気楽に聴いていっこうにかまわない。

しかし、中には例外もあって、音が出た瞬間に思わず襟を正したくなるような格調高い「四季」の演奏がここにある。それが今回紹介するチョン・キョンファのヴァイオリン独奏による四季である。

この曲の一般的なイメージである、四季折々の花鳥風月といった趣とは別次元の気高さを持った演奏である。

気高さだけが音楽の価値ではないが、あえて気高さを称揚するなら、チョン・キョンファのこの演奏は、バッハの至高の名曲群に匹敵するであろう。

キョンファの素晴らしいヴァイオリン独奏を聴くと、「ああ、そういえば四季はヴァイオリン協奏曲だったんだな」という当たり前のことを再発見する喜びもひとしおである。

この曲を愛する人は、必ず聴いてほしい素晴らしい名演である。

なお、この演奏が素晴らしいということと、世の中には様々な演奏スタイルがあるということは別の話なので、色々聴き比べてみると楽しいであろう。

ヴァイオリン独奏パートをリコーダーやフルートで演奏した録音や、チェンバロの代わりにバロックギターを使った録音など、クラシック入門者にとっても「演奏聴きくらべ」の喜びを堪能して欲しいと願う次第である。

(収録曲)
1. ヴァイオリン協奏曲集「四季」作品8 第1番「春」ホ長調RV.269第1楽章:アレグロ
2. ヴァイオリン協奏曲集「四季」作品8 第1番「春」ホ長調RV.269第2楽章:ラールゴ
3. ヴァイオリン協奏曲集「四季」作品8 第1番「春」ホ長調RV.269第3楽章:牧童の踊り(アレグロ)
4. ヴァイオリン協奏曲集「四季」作品8 第2番「夏」ト短調RV.315第1楽章:アレグロ・ノン・モルト
5. ヴァイオリン協奏曲集「四季」作品8 第2番「夏」ト短調RV.315第2楽章:アダージョ
6. ヴァイオリン協奏曲集「四季」作品8 第2番「夏」ト短調RV.315第3楽章:プレスト
7. ヴァイオリン協奏曲集「四季」作品8 第3番「秋」ヘ長調RV.293第1楽章:アレグロ
8. ヴァイオリン協奏曲集「四季」作品8 第3番「秋」ヘ長調RV.293第2楽章:アダージョ・モルト
9. ヴァイオリン協奏曲集「四季」作品8 第3番「秋」ヘ長調RV.293第3楽章:アレグロ
10. ヴァイオリン協奏曲集「四季」作品8 第4番「冬」へ短調RV.297第1楽章:アレグロ・ノン・モルト
11. ヴァイオリン協奏曲集「四季」作品8 第4番「冬」へ短調RV.297第2楽章:ラールゴ
12. ヴァイオリン協奏曲集「四季」作品8 第4番「冬」へ短調RV.297第3楽章:アレグロ
13. チョン・キョン=ファ自身による「四季」の解説(韓国語)
(TechinsightJapan編集部 真田 裕一)