writer : techinsight

【名盤クロニクル】フランスの姉貴!パトリシア・カース「ランデブー」

(画像提供:Amazon.co.jp)

(ジャンル:フレンチポップ)

フランスの女性歌手というと、60年代のフランス・ギャル(「夢見るシャンソン人形」)や、懐かしのOlive少女から絶大な支持を受けていたフランソワーズ・アルディ、そしてこのコラムでも紹介したエロス全開のジェーン・バーキンや若手のヴァネッサ・パラディなどが有名である。しかし、これらの人たちの人気により、日本では「フランスといえばロリータかエロ」というイメージが固定化してしまった。
そんなイメージを打破する実力派シンガーが、すでに数度の来日公演も行っているパトリシア・カースである。

パトリシアのハスキーでソウルフルな歌声は、それまでのフランスのシンガーには見られない個性的な存在である。

ロック、ジャズ、ソウルなどを吸収して育ってきた世代であり、リズム感もフランス人離れしている。

なにしろ、シャンソンの伝統を引くフランスでは、リズムとメロディが合っていないのが美しいとされる。つまり語るように歌うのが基本になっているため、ロック的な歌をカッコよく歌える人は珍しいのだ。

そんな彼女の90年代の作品はどれも力作揃いであるが、やはりセールスとの兼ね合いで、フランス人の趣味にマッチした曲を集めてみたり、英米ロックに傾倒したアルバムを出したり、色々試行錯誤している。

フランスの音楽状況は、日本とよく似ていて、コアに歌謡曲的なもの(シャンソン的なもの)が存在していないと、売れないのである。

本人は「脱シャンソン」を目指したいのかもしれないが、本国で売れなければ元も子もない。そんな葛藤と戦いながら、活動を続けるパトリシア・カースのアルバムの中から、様々なスタイルの楽曲がバランスよく収められている1998年のライブアルバム「ランデブー」を推薦しておきたい。

オリジナルのロック/ブルース路線の楽曲や、フランスの伝統シャンソンのカバーなど全20曲を熱唱しているが、彼女の実力を古いシャンソンファンにも納得してもらうためには、アンコールで歌われた「黒いワシ」(オリジナルはバルバラの代表曲)を聴いてほしい。

単なるカバーではなく、解体でもない、堂々たる歌いっぷりは圧巻である。フランス語の発音もエグくなく、かといってささやき系ロリ声でもない、ワールドワイドで通用する歌の数々だ。

(収録曲)

ディスク:1
1. アントロ
2. バラ色の人生
3. モン・メック・ア・モア
4. 海を前に愛し合う~ラムール・ドヴァン・ラ・メール
5. 通り過ぎてゆく男たち
6. 朝陽の輝きを待って~オントレ・ダン・ラ・リュミエール
7. この時代(とき)に生きて~カン・ジェ・プール・ド・トゥー
8. 何も思い出さない~ジェ・ム・スーヴィアン・ド・リアン
9. はかない愛だとしても~イル・ム・ディ・ク・ジュ・スゥイ・ベル
ディスク:2
1. ジェントルマン・カンブリオルゥー
2. お願い~フェ・モワ・ラミティエ
3. リッチなひとたち
4. ケネディ・ローズ
5. あなたのために歌わせて~スゥ・キ・ノン・リアン
6. マドモアゼル・シャントゥ・ブルース
7. 私たちの手相~レ・リニュ・ド・ノー・マン
8. 私のからだの中で~ダン・マ・シェール
9. 彼女のことを知りたい~ジュ・ヴードレ・ラ・コネートル
10. 黒いワシ~レグル・ノワール
11. シンプルな歌~シャンソン・サンプル
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)