writer : techinsight

【親方日の丸な人々】今年の春闘はひと味違う官公労

2月も末になると、春の足音とともに、人事異動と春闘シーズンが迫ってくる。
民間企業と異なり公務員の給料や勤務条件は政治の場で決まる。従って公務員の春闘はただのお祭りであり、毎年同じような要求項目を掲げて労組幹部が盛り上がるだけのセレモニーである。昨年まではそうだったが、今年はどうもひと味違うようなのだ。官公労は極めて困難な判断を迫られることになりそうだ。

官公労は、現在の政権与党である民主党の重要な支持母体である。しかし、現在、同党が推し進めている公務員改革は、下野した自民党の行ってきた改革よりもさらに積極的であり、これは官公労の意に沿うものではない。

一般労組員からは「公務員減らしを推進する民主党をいつまで支持するのか」という不満の声も大きい。これに対して官公労幹部の見解は「是々非々(良いことには賛成するし、悪いことには反対する)」という優等生的な回答ではあるが、世間のしがらみはそうそうタテマエ通りには行かない。

実は、官公労幹部にとっては、支持政党と友好関係を築いていれば、自分たちの将来は安泰であるから、末端組合員の生活がどうなろうとあまり関係ないのである。

もっとも、組合員の選挙で選ばれた役員であるから、最終的には組合員をなだめすかすことを考えるであろう。

しかし、現在、もっと強力な伏兵が控えている。それは外国人参政権法案である。
本来、公務員制度改革とは全く別の法案であり、議論の次元が違うのだが、仮に外国人参政権法案が成立し、参政権を得た外国人が民主党支持に回れば、同党の支持基盤は強力になる。

そうすれば、同党は官公労依存体質からの脱却が図れることとなり、公務員制度改革も容赦なく推進できるという効果がある。

繰り返すが、外国人参政権と公務員制度改革は全く別個の案件である。しかし、現実にはこうしたややこしい状況を整理するために、官公労幹部はこれまでになく知恵を絞る必要があるだろう。

そのほか、公務員の降格人事案が閣議決定され、今のところエリート幹部のみが想定されているが、これが末端職員にまで適用されてくるようになれば、組合の存立を脅かすような人事が行われるだろう。

組織に従順でない職員を、「名目昇進・実質同格・結果降格」という処遇にすることも可能になるので、これを防がなければならないという差し迫った課題もある。

あるいは逆に労使なれ合いで、これを逆利用して組合活動に非協力的な職員を冷遇するという事態も考えられる。そうなれば、一般組合員の立場はこの上なく弱くなる。

これまでのように、頭の中で一足早い桜を咲かして春闘を祭っているわけにはいかない、2010年の春である。
(TechinsightJapan編集部 石桁寛二)